リスクファクター

JTグループは、130以上の国と地域で製品を販売するたばこ事業を中核としたグローバル企業です。当社グループの事業特性、事業環境の変化等によりさまざまなリスクがあります。

JTグループは、中長期に亘る持続的な利益成長と企業価値の向上に寄与し、当社グループの透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う仕組みを充実させるため、グループ全体を対象に統合型リスク管理(ERM: Enterprise Risk Management)を導入しています。当社グループに影響を及ぼす可能性があるリスクを特定し、影響度と可能性の双方の観点で評価することで、優先して対応すべき重要リスクを選定し、対応計画の策定、モニタリングを実施しています。これらのリスク要因のいずれによっても、当社グループの事業運営および業績に影響を及ぼす可能性がありますが、リスクを適切に管理することにより、事業成長の機会を適切に捉え、戦略的な事業展開につなげています。

以下の記載は、本統合報告書PDF版P.3に記載の「将来に関する記述等についてのご注意」と併せてご覧ください。

1)大幅または度重なる増税

リスクの概要

たばこ製品に対しては、消費税または付加価値税に加えて、たばこ税あるいはそれに類する税金が課せられています。各国で財政および公衆衛生の観点による増税議論が行われ、たばこ税の増税が行われています。加えて、一般的に、付加価値税も上昇の傾向にあります。JTグループは、増税が行われた場合には、増税分に加えて定価改定後の需要減による影響も考慮し、価格に転嫁することとしており、トップライン施策、コスト効率化と併せて増税に伴う事業影響の最小化に努めています。なお、ほとんどの政府が大幅な増税や度重なる増税は、税収の減少につながる可能性があることを認識し、合理的なアプローチを取っていますが、市場によっては過去に当社グループの事業に大きな影響を与えるような増税が行われたことがあります。

リスクの主な影響

たばこ製品に対する大幅または度重なる増税は、たばこ製品の消費減少や不法取引の増加につながります。また、お客様*の低価格帯製品への転移を発生・促進させることがあります。その結果、当社グループの販売数量、売上収益、利益が減少する可能性があります。

主な対応
  • 関係当局に対し、大幅または度重なる増税は、消費減少による税収減少や不法取引の増加といった負の影響を伴い得ることについて理解を促す。
  • お客様*の嗜好・行動の変化に対応できるよう製品ポートフォリオの最適化を図る。
  • 限られた市場から生み出される利益に過度に依存しないよう、グローバル事業基盤の強化および拡充を図り、継続的に利益創出できる市場数を拡大する。
  • 収益を確保すべく、さらなるコスト効率化を進める。
  • 当該市場における増税影響を最小化すべく適切な価格設定を行う。

*

喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。

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2)不法取引の増加

リスクの概要

不法取引は、たばこ業界だけでなく、社会全般に関わる問題です。たばこ業界にとっては、適切に法令に則って行っているビジネスを阻害するものであり、社会にとっては政府の税収の減少、組織犯罪の増加、粗悪な製造品質や不適切な製品管理による健康被害といった問題を引き起こす可能性があります。JTグループをはじめとしたたばこ業界は、密輸や偽造といった不法取引撲滅に向けた取り組みを続けています。

不法取引は大幅または度重なる増税実施後に増加する傾向があります。また、製品成分やパッケージに対する規制は、偽造を容易にするとともに、非正規品の検出を困難にするおそれがあり、不法取引を助長する可能性があります。

リスクの主な影響

不法取引の増加は、正規品の需要減少を引き起こし、当社グループの販売数量、売上収益、利益の減少につながるおそれがあります。また、不法取引への対応に係る負担が、利益を圧迫することがあります。加えて、偽造品の品質が低いことなどから、非正規品の流通が正規品の信頼を損ない、そのブランドとブランドを保有する企業の評価を下げる可能性があります。

主な対応
  • 政府、規制当局、取締機関と協働して不法取引撲滅に向けた取り組みを実行する。
  • たばこ製品追跡システムを運営し、サプライチェーンに沿った製品の移動を追跡・分析する。
  • 厳格なコンプライアンス方針に則り、信頼できる相手先とのみ取引を行う。
  • 非正規品の購入が及ぼす悪影響を、お客様*に理解していただく。

不法取引撲滅に向けた活動の詳細は不法取引防止に向けた取り組みをご覧ください。

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喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。

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3)たばこ規制の強化

リスクの概要

たばこ業界は販売促進活動規制(広告規制含む)をはじめとした多くの規制を受けており、規制の動向はJTグループの事業および業績へ影響を与えることがあります。

こうした規制は、不法取引の増加につながるおそれがあり、当社グループの適法・適切に行っている事業に悪影響をもたらす可能性があります。また、お客様*とのコミュニケーションに関する規制の厳格化が進展すれば、効果的な販売促進活動を実施することが難しくなり、トップライン成長に影響を与える可能性があります。

責任ある企業として、当社グループは、事業を展開している国・地域の法令および規制を遵守しています。また、法令や規制は、各国の法制度、社会情勢、文化を背景として、国ごとに異なって然るべきであると考えています。

リスクの主な影響

販売促進活動に係る規制の強化によって、ブランドエクイティを高める機会を失った結果、トップライン成長戦略の実効性を損なう可能性があります。また、規制によっては、その対応に伴い追加的なコストが発生することが考えられます。その結果、販売数量、売上収益、利益が減少することがあります。

主な対応
  • 規制動向の正確かつ迅速な情報収集を行う。
  • 目的にかなった合理的かつ偏りのない規制となるよう、政府や規制当局との建設的な対話に努める。

詳細は規制・重要な法令をご覧ください。

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喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。

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4)競合他社との競争

リスクの概要

JTグループは、たばこ事業において、競合他社と熾烈な競争関係にあります。

たばこ事業においては、当社グループはオーガニック成長に加え、RJRナビスコ社の米国外たばこ事業の取得、Vector Group Ltd.の買収等を通じて事業を拡大してきました。これら買収の結果、当社グループは、グローバルに事業を展開するたばこ会社に加え、それぞれの地域において強みを持つ企業と競合関係にあります。

各市場におけるシェアは、規制、お客様*の嗜好・行動の変化や各市場の経済情勢といった要因に影響されて変動します。また、各社の新製品の投入やこれに伴う特別の販売促進活動等の一時的な要因により、短期的に変動することがあります。

リスクの主な影響

シェアの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが事業を展開する市場の中には、市場シェアの獲得を目的とした値下げやブランドのリポジショニング等により価格競争が起きる場合があり、この影響を受け個別市場の当社グループ利益率が悪化する可能性があります。

主な対応
  • お客様*の嗜好・行動の変化やニーズにマッチした製品を提供することや、各価格帯に強いブランドを配置することで、製品ポートフォリオの最適化を図る。
  • 営業力の強化や効果的な販促施策を行う。
  • 収益を確保すべく、さらなるコスト効率化を進める。
  • 限られた市場から生み出される利益に過度に依存しないよう、グローバル事業基盤の強化および拡充を図り、継続的に利益創出できる市場数を拡大する。

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喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。

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5)カントリーリスク

リスクの概要

JTグループは、長期的な成長実現のため、世界の各国・各地域で事業展開しています。当社グループが事業を行っている市場において、現地の政治・経済・社会・法制度等の変化や暴動、テロおよび戦争の発生に伴うカントリーリスクが相対的に高まり、リスクが具現化した場合には、当社グループの事業運営および業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、ロシア・ウクライナ情勢が長期化、複雑化する中、ロシア市場において、国内外におけるあらゆる制裁措置・規制等を遵守した上で事業運営を継続しています。ロシア市場における事業環境は、過去に例がない厳しいものとなっており、今後の事業への影響は多岐に亘るものと想定されますが、当該統合報告書の発行日現在において、今後の⾒通しや業績への影響については合理的に見積もることができません。

リスクの主な影響

政情不安、景気低迷、社会的騒乱等によりリスクが具現化した場合、サプライチェーンや流通網の遮断、資産や設備の毀損、人員配置および営業管理の困難性等によって、特定の市場における当社グループの事業運営が阻害され、販売数量、売上収益、利益が減少する可能性があります。

主な対応
  • 安定的な事業運営に向け、事業展開をしている各国・各地域におけるカントリーリスクに係る情報を収集・モニタリングし、情報に基づいたシナリオプランニングを行う。
  • 限られた市場から生み出される利益に過度に依存しないよう、グローバル事業基盤の強化および拡充を図り、継続的に利益創出できる市場数を拡大する。
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6)為替変動

リスクの概要

JTグループは、グローバルに事業を展開していることから、為替の変動に係るリスクに晒されています。

当社グループの連結財務諸表は日本円表示で作成していますが、海外の当社グループ会社は、ロシアルーブル、ユーロ、英ポンド、台湾ドル、米ドル、スイスフラン等の通貨で財務諸表を作成しています。そのため、外国通貨の日本円に対する為替変動がグループ業績に影響を与えることになります。当社グループは、このような財務諸表の換算に起因するリスクについては原則ヘッジを行っていません。ただし、資本を日本円に換算し連結する際のリスクに対しては、外貨建有利子負債を利用したヘッジを行っており、その一部は純投資ヘッジの指定を行っています。

さらに、日本円以外の通貨で取得したグループ会社について、清算、売却、あるいはその価値を大きく減損する場合に発生する損益も為替影響を受けます。具体的には、取得時と清算等を実施した際との、取得通貨と日本円との間の為替差が影響します。

リスクの主な影響

日本円に対するその他通貨の為替変動が、当社グループの連結業績に影響を与えます。また、米ドル表示の海外におけるたばこ事業の業績が、米ドルに対するその他通貨の為替変動の影響を受けます。加えて、グループ会社がその報告通貨と異なる通貨で取引を行う場合にも、為替変動リスクがあります。

主な対応
  • 為替相場の現状等を総合的に勘案の上、外国為替に係るヘッジ方針を策定し、当方針に基づき、外貨建有利子負債等の保有などを通じたヘッジにより、リスクを低減する。
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7)訴訟の不利な展開

リスクの概要

JTの一部子会社は、喫煙、たばこのマーケティングまたはたばこの煙への曝露により損害を受けたとする訴訟の被告となっています。喫煙と健康に関する訴訟については、当社の一部子会社を被告とする訴訟、またはRJRナビスコ社の米国外たばこ事業を取得した契約に基づき、当社が責任を負担する訴訟が存在しています。

また、JTグループは、喫煙と健康に関する訴訟以外においても被告になっており、今後も当社グループを当事者とした訴訟等が発生する可能性があります。

リスクの主な影響

当社グループは係争中、または将来の喫煙と健康に関する訴訟がどのような結果になるのか予測することはできません。

訴訟が当社グループにとって望ましくない結果となった場合、多額の賠償責任を負うこと等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。またこれら訴訟に関する批判的な報道等により、喫煙に対する社会の許容度の低下や公的な規制の強化、当社グループに対する多くの類似の訴訟の提起や係る訴訟の対応および費用が発生することで、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、喫煙と健康に関する訴訟以外にも、当社グループの製品の品質に何らかの問題が生じた場合に製造物責任の請求を受ける等、今後も当社グループを当事者とした訴訟等が発生する可能性があります。これらの訴訟等が、当社グループにとって望ましくない結果になった場合に、当社グループの業績や製品の製造・販売・輸出入に悪影響が及ぶ可能性があります。

主な対応
  • 社内外連携体制を構築し、訴訟等の情報把握と経営層や関係部門への情報共有を速やかに行う。
  • 必要に応じ経験豊富な社外弁護士と連携して、適時適切な訴訟対応を行う。

詳細は訴訟をご覧ください。

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8)自然災害および不測の事態等

リスクの概要

地震、津波、台風、洪水をはじめとした自然災害や感染症の発生等によって、従業員の被災、サプライチェーンや流通網の被災に起因する商品供給の不足・停止、需要の減少等によりJTグループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクの主な影響

自然災害により、当社グループのみならず、バリューチェーン全体が被害を受け、当社グループの事業を滞らせ、業績を悪化させる可能性があります。

主な対応
  • 平時から危機管理関連情報の継続的な収集および発信を行う。
  • 必要に応じ、重要な資産に損害保険を付保する。
  • グローバルベースでサプライチェーンの全体最適化等の事業継続計画の整備を行い、適切な在庫水準の確保や、必要に応じた⾒直しを行う。
  • 防災訓練等を実施し、従業員の防災意識を高める。
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9)気候変動

リスクの概要

地球温暖化に伴う気候変動は、集中豪雨等の異常気象による浸水・洪水・土砂災害や、天候不順による酷暑・大雪・干ばつ、水資源の変化、生物多様性の損失等、さまざまな被害をもたらします。その結果、葉たばこ等、JTグループの主要原料の生育環境の変化やサプライチェーンの寸断等が引き起こされ、原料品質の悪化や原材料価格および調達コストの増加等により、当社グループの製品製造や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、気候変動影響を緩和するための脱炭素社会への移行に伴い、化石燃料由来のエネルギー等の価格に炭素税が付加される場合、当社グループの事業コストを増加させ、利益を圧迫するおそれがあります。

リスクの主な影響

気候変動により、JTグループや、当社グループのバリューチェーンが被害を受けることで、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴って事業コストが増加し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

主な対応
  • TCFD提言に基づいて気候変動シナリオ分析を実施し、気候変動が事業に及ぼす影響をより的確に把握し、適切に対応できる体制を整備する。
  • 気候変動影響を緩和するため、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量ネットゼロに取り組む。
  • 気候変動により激甚化するおそれのある自然災害に対し、上記「8)自然災害および不測の事態等」に記載の対応を行う。

詳細は自然との共生をご覧ください。

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