サステナビリティの
取り組み
自然との共生
JTグループは、自然環境に与える影響の改善に向けた取り組みを通じて、自然と人や企業の健全な関係性を保全していくことが重要と認識しています。「人の暮らしや社会、企業の活動、あらゆる人の営みは、生態系を紡いでいく一部である」という考えから、これまでの環境に関連する私たちの取り組みを生態系という観点から見つめ直すとともに、生物多様性の観点も踏まえ、私たちの事業が生態系に及ぼし得る、その復元力を超える負の影響を解消していくべく、「自然との共生」というマテリアリティに紐づくターゲットを掲げています。
気候変動
ネットゼロの実現に向けて
ターゲットの一つに温室効果ガス(GHG)排出量の削減を掲げ、2030年までにJTグループの事業においてカーボンニュートラルを実現し、2050年までにバリューチェーン全体でGHG排出量をネットゼロにすることを⽬指しています。この目標の達成に向け、2030年までのロードマップを策定し、より実現確度の高い戦略となるよう毎年見直しを行っています。2024年には、計画通りに再生可能エネルギーの導入を行い、目標達成に向けて着実に進捗しています。
シナリオ分析
JTグループでは複数の気候変動シナリオ(1.5℃、4℃等)を用いたシナリオ分析を実施しています。分析にあたり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による代表的濃度経路シナリオ(RCP2.6、RCP4.5、RCP8.5)を用いています。分析の結果、「カーボンプライシング(炭素税の引き上げ)」と「平均気温上昇に伴う作物生育環境変化」の2つを当社グループにとっての主要な気候関連リスクとして特定しました。
社外からの評価:Science Based Targets(SBT)
気候変動に関する国際的イニシアティブであるSBTイニシアティブより、2030年のGHG排出量削減目標について1.5℃目標の認定を取得しています。2050年までにバリューチェーン全体でGHG排出量をネットゼロにするという目標については、認定取得に向け、申請を行いました。

ネットゼロの実現に向けたロードマップ



社外からの評価:CDP
国際的な環境情報開示のプラットフォームであるCDPより、気候変動の取り組みが優れた企業として、最高評価「Aリスト」に6年連続で選定されました。プレスリリース 2025年2月
また、2024年の「サプライヤーエンゲージメント評価」(2025年7月公表)においては、最高評価の「サプライヤーエンゲージメント・リーダー」に6年連続で選定されています。


生態系影響評価の実施
JTグループの事業活動において、葉たばこをはじめとした農作物等の自然由来の原料を使用しており、事業活動を持続可能とするためにも、自然環境の持続可能性が必要不可欠です。また、グローバルに事業を展開する当社グループにおいて、自社だけでなくバリューチェーンにおける自然環境の持続可能性に貢献していくことは、果たすべき重要な責務と考えています。
このような考えのもと、ターゲットの一つに生態系影響評価の実施を掲げ、当社グループの各事業が生態系に与える影響および生態系への依存の評価について、生物多様性の観点を含め、取り組みを進めています。2024年においては、たばこ事業における生態系影響評価を、SBTN*の分析手法に基づいて以下のステップで実施しています。
- たばこ事業のバリューチェーンやマーケット、葉たばこ調達国における、生態系への影響と依存の現状把握に向けたベースラインデータの収集
- たばこセクターレベルでの評価による、生態系への潜在的な影響と依存が生じる範囲の特定
- たばこ事業が生態系に与える影響および依存の定量化に向けた、グローバルでの概要分析および、特定の国(ブラジル、マラウイ、ザンビア、タンザニア、インドネシア、バングラデシュ等)における詳細分析の実施
- 直接操業および、バリューチェーン、隣接地域などのさまざまな影響範囲における、取り組み優先地域の決定
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Science Based Targets Network
今後は、取り組み優先地域ごとのアクションプランを策定するとともに、詳細分析の評価範囲を広げていく予定です。これらの取り組みは、生物多様性に限らず、気候変動をはじめとするその他環境関連課題に対してもポジティブな影響を及ぼすものと考えており、「自然との共生」に向けた新たな戦略および目標を策定し、取り組みを加速していきます。
責任ある水資源マネジメント
ターゲットの一つに責任ある水資源マネジメントを掲げ、健全な水環境の保全に貢献すべく水資源の適切な使用状況をモニタリングするとともに、水質汚染防止の徹底に取り組んでいます。水資源は貴重な共有資源であることから、私たちはAWS*の考えに基づき、たばこ工場でのAWS認証の取得を進め、ステークホルダーとの連携強化に努めています。2024年には、日本、ロシア、マラウイ、トルコで水リサイクル率を向上させ、ドイツ、エチオピア、フィリピン、インドネシアでは水処理プロセスの改善を図りました。
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Alliance for Water Stewardship:企業やNGO、公共セクターをメンバーとする、水のサステナビリティをグローバルに推進するための機関
責任あるサプライチェーンマネジメント
人権の尊重
私たちは、人権の尊重を、経営理念「4Sモデル」に基づいた事業活動を行う上で不可欠な要素だと考えています。また、人権の尊重は、サステナビリティ経営の根幹となるJT Group Materialityに通底するものであり、サプライチェーンマネージメントにおいて欠かせません。
JTグループは、バリューチェーン全体を通じて人権を尊重し、「国際人権章典」に謳われる人権および国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」で規定された原則を尊重しています。JTグループ人権方針は「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)のフレームワークに則ったものです。
人権の取り組み—5つの柱
JTグループの人権への取り組みは、右に掲げた5つの柱を軸としています。このPDCAの取り組みにより、UNGPや経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業行動指針、またOECDと国連食糧農業機関(FAO)による「責任ある農業サプライチェーンのためのガイダンス」に則った体系的な人権デュー・ディリジェンスの継続的な実施が可能になります。

グリーバンス・メカニズム(救済)
JTグループでは、従業員やお取引先で働く方々を対象に、「JTグループ行動規範」に違反する行為または違反するおそれのある行為についての相談・通報を受け付けています。人権について懸念があれば、この仕組みを通じて通報することが可能です。
利用ガイドの配布、ポスターの掲示等を通じて、窓口の周知に努めています。
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コンプライアンス体制・相談通報体制については、JTウェブサイトをご覧ください。
JTグループ自社拠点における取り組み
当社グループの自社拠点においても、上述の5つの柱に沿って、人権デュー・ディリジェンスを実施しています。取り組みについてはJTウェブサイトをご覧ください。
人権デュー・ディリジェンス
JTグループの顕著な人権課題
当社グループにとって最も重要な人権課題に対処していくという「優先順位付け」の考え方に立ち、自社の事業活動やバリューチェーンに関連する9つの顕著な人権課題を特定しました。
事業活動や取引関係を通じ、負の影響を生じさせる可能性のある人権課題を洗い出し、影響の深刻度と発生可能性に基づき特定しています。
●児童労働 ●環境影響 ●公正な賃金 ●強制労働 ●ハラスメント/ジェンダー ●労働安全衛生 ●健康リスク ●差別 ●長時間労働
各国における人権影響評価
人権リスクがより⼤きい国から評価を行う「優先順位付け」の考え方に立ち、取り組みを推進しています。また、事業環境や社会環境の変化を踏まえ、人権⾼リスク国の⾒直しも継続的に行っています。
2024年末時点で、グループ全体で16カ国において人権影響評価を、また18カ国で自己評価質問票による評価を完了しています。各国で特定した主な人権リスク、是正策、進捗についてはJTウェブサイトをご覧ください。
サプライヤーエンゲージメント
JTグループが事業を行い、持続的に成長していく上で、パートナーとなるお取引先の存在は必要不可欠です。この考えのもと、お取引先の人権に関わる取り組みの現状、取り組みを進める上での難しさなどを、対話を通して把握し、適切な協業を行っていくことが重要だと考えています。
上述の顕著な人権課題を踏まえ、以下で挙げた領域に関わるサプライチェーンが特に重要だと認識し、取り組みを推進しています。
コミュニティインベストメント
JTグループが持続的に成長するためには、社会の持続的な発展に貢献することが必要不可欠であると考えています。私たちは、包摂的かつ持続可能な地域社会の発展に向けて、幅広いステークホルダーとともに社会課題の解決に向けて取り組んでいます。
JT Group Sustainability Targetsコミュニティインベストメント目標の達成
「包摂的かつ持続可能な地域社会の発展を目指し、2015年から2030年の間に総額600億円の投資を行う」という目標を2019年に掲げて以来、地域社会に対する投資を継続して実施してきました。その結果、2015年から2024年までの累積投資額は655億円に達し、目標を6年前倒しで達成するに至りました。
地域別投資実績
日本、フィリピン、台湾といったたばこ事業の主要市場を抱えるアジア地域において、2015年以降の投資額の約50%を占める331億円を拠出しました。そのほか、事業を展開する世界各地において、現地の事業拠点が主体となって社会課題の解決に取り組んでいます。

領域別投資実績
JTグループのプログラムは、グローバルな社会課題および地域特有の課題に対応するよう設計されており、「格差是正」「災害分野」「環境保全」の3つの領域を重点領域として位置付けています。
「格差是正」に向けては、恵まれない人々の食料や水、衛生設備、教育、文化芸術へのアクセス向上に取り組んでおり、2015年以降の投資額の約47%を占めています。
「災害分野」においては、災害発生時の緊急支援活動や中期的な復興支援活動に加え、災害リスクの軽減に向けた活動に平時から取り組むことで、安全で持続可能な地域社会づくりを推進しています。
また、「環境保全」では、世界各地で森林保全や生物多様性の保全、環境美化活動に取り組んでいます。

2015年以降、これまでに世界各地で延べ5,891団体を支援し、延べ2,651万人に支援を届けてきました。今後も包摂的かつ持続可能な地域社会の発展に向けて、さらなる社会的インパクトを創出すべく、取り組みを進化させていきます。

良質なガバナンス
コーポレート・ガバナンスは、さまざまなステークホルダーの満足度を高め、信頼される企業体であり続けるための礎となるものであり、JTグループのあらゆる活動の前提となるものと考えています。当社グループではマテリアリティの一つである「良質なガバナンス」について、持続的な成長と企業価値の向上の原動力となる各事業のガバナンスを適切に担保するために、「事業特性に即した内部統制」をサステナビリティターゲットとして定めています。
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JTグループのガバナンスについてはコーポレート・ガバナンスをご覧ください。