社会的責任の発揮

JTグループが持続的に成長するためには、社会の持続的な発展に貢献することが必要不可欠であると考えています。JTグループコミュニティインベストメント基本方針では、その目的を「包摂的かつ持続可能な地域社会の発展へ貢献すること」と定めています。すべての人は社会の一員として受け入れられるべきであり、包摂的かつ持続可能な地域社会は事業にとっても重要であると考えています。私たちは、この方針に基づき、責任ある地域コミュニティの一員として、自然・社会・人間の多様性に価値を認め、幅広いステークホルダーとともに、社会課題の解決に向けて取り組んでいきます。
重点領域
包摂的かつ持続可能な地域社会の発展のために、国内外の様々な団体との長期的なパートナーシップを通じ、世界66カ国で512のコミュニティインベストメントプログラムを実施しています。世界各国の現地法人は、JTグループコミュニティインベストメント基本方針と国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「人や国の不平等をなくそう」(目標10)、「住み続けられるまちづくりを」(目標11)、「陸の豊かさも守ろう」(目標15)、「パートナーシップで目標を達成しよう」(目標17)に沿ったプログラムを実施しています。
JTグループのコミュニティインベストメントプログラムは、グローバルな社会課題および地域特有の課題に対応するように設計されており、以下の3つの領域を重点領域として位置付けています。
- 1. 格差是正: 恵まれない人々の食糧や教育へのアクセスの向上 など
- 2. 災害分野: 災害多発地における防災活動、清潔な水の供給 など
- 3. 環境保全:従業員参加型の森林保全活動の実施 など
JTグループでは、従業員が地域社会と関わることで、新しいスキルを習得し、誇りと満足感を得ることができるようボランティアの機会を提供しています。
目指す姿
私たちは、人財への投資を通じて、従業員や社会から選ばれる企業になることを目指します。
中期取り組み目標(KPI)
包摂的かつ持続可能な地域社会の発展を目指し2015年から2030年の間に、600億円の投資を行い、従業員が30万時間のボランティア活動に従事することを目指します。
中期取り組み目標の進捗状況
2015年より、地域社会へ391億円を投資し、従業員は就業時間内に137,882時間のボランティア活動に従事しました。
社会貢献活動実績(円)
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2030目標 | |
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社会貢献活動実績 | 90億 | 74億 | 61億 | 59億 | 54億 | 53億 | |
社会貢献活動実績累計 | 90億 | 164億 | 225億 | 284億 | 338億 | 391億 | 600億 |
従業員がボランティア活動に従事した時間数
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2030目標 | |
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従業員がボランティア活動に従事した時間数 | 13,997* | 24,292 | 21,911 | 25,428 | 33,055 | 19,199 | |
従業員がボランティア活動に従事した累計時間数 | 13,977 | 38,289 | 60,200 | 85,628 | 118,683 | 137,882 | 300,000 |
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海外たばこ事業のデータのみ
効果測定及び社外からの評価
JTグループの活動は、Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)の「Corporate Citizenship and Philanthropy」項目において100点満点を獲得し、業界リーダーとして評価されるなど、外部機関から高い評価を受けています。
JTグループは、Corporate CitizenshipによるBusiness for Societal Impact (B4SI)*フレームワークを用いて、取り組みの実績とインパクトを測定しています。2020年には、事業を展開する国々において、地域社会への貢献として52億8,624万円(83%はコミュニティインベストメント、17%は寄付金)を投資しました。
すべてのプログラムがJTグループコミュニティインベストメント基本方針に則り、社会的インパクトを与えられるよう、より正確な測定と開示に取り組んでいます。
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企業の社会的インパクトを効果測定する国際基準

2020年の実績

JTグループの取り組み
格差是正
JTグループでは、包摂的社会の実現に向け、多くの団体とパートナーシップを結び、地域社会の人々のニーズに応えるさまざまな支援を行っています。
2020年には、JTグループが事業を展開する国・地域の76%において、290の格差是正プログラムと127の文化芸術領域での格差是正プログラム(誰もが文化芸術に触れられるようにするための支援等)をサポートしました。2020年には、「格差是正」関連プログラムについて、11カ国の現地法人からBusiness for Societal Impact (B4SI)*フレームワークを用いたインパクトデータの報告を受領しました。

ケーススタディ:OrchLab:音楽作りで社会に変化を
英国のコミュニティインベストメントチームは、障がいのある方々に音楽作りの喜びを感じてもらうため、世界的に名高いロンドンフィルハーモニー管弦楽団と協働しています。OrchLabと呼ばれるこのユニークなプロジェクトは、障がいのあるなしにかかわらず、あらゆる人が音楽に親しむことができる社会の実現をテクノロジーでサポートする団体「ドレイク・ミュージック」による先駆的な支援技術に支えられています。
OrchLabは、革新的なデジタル楽器、対象者に合わせたワークショップ、研修やイベントを提供し、参加者が演奏を見たり、音楽活動を楽しんだり、他のメンバーとやりとりできる双方向型のウェブサイトを運営しています。このプロジェクトは、障がいの有無にかかわらず誰もが参加できる音楽作りを通じて、参加者の心身の健康を向上させることを目的としています。
このプロジェクトは2016年に始まり、新型コロナウイルス感染拡大が続く中でも継続されました。ワークショップにはZoomを使用し、そのおかげで、この困難な時期においても参加者や介護者、そしてOrchLabのパートナー団体がつながりを持ち続けることができました。私たちはこの重要な取り組みの今後の発展を楽しみにしています。

災害分野
数多くの自然災害に見舞われてきた日本に本社を置くJTグループは、長年にわたり災害管理に関する知見を積んできました。2020年には、合計53のプログラムを支援し、世界で15万3,613人の人々がその恩恵を受けています。
国内では、被災地における支援活動や、災害に強いまちづくりへの支援を行っています。2020年には17の関連プログラムを支援しました。また、従業員向けに危機対応ガイドラインも整備しています。

災害分野への支援は、被災地における支援活動のほか、平時における災害リスク軽減への支援活動に取り組むことで、安全で持続可能な地域社会づくりを推進しています。
災害への備え:Preparedness
持続的な地域社会の発展に寄与することを目的とし、災害捜索救助隊の育成支援など、平時におけるリスク軽減への支援活動に取り組んでいます。
緊急支援:Disaster Relief
国内外での災害発生時には、グループ各社で連携し、被災地への緊急支援に取り組んでいます。
復興支援:Disaster Recovery
被害が甚大な災害において、より良い復興(Build Back Better)を目指した中期的な復興支援活動に取り組んでいます。
ケーススタディ:社会に変化をもたらす風
日本に本部を置くピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、困窮している人々や、紛争や貧困などの要因により危機にさらされている人々に対して世界的に支援活動を行うNGOです。
JTは災害分野での取り組みの一環として、2016年からPWJとパートナーシップ協定を締結しています。2019年には協定を3年間延長し、引き続き、レスキューチームの育成を支援し、世界各地の災害発生時のPWJの被災地支援活動をサポートしています。
JTグループは今後3年間でPWJによる以下の取り組みを支援していく予定です。
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救助犬と救助隊スタッフの訓練
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海外の捜索救助(SAR)団体との関係構築と、将来の災害発生時の協力に備えた共同訓練の実施
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災害発生時にPWJが速やかに支援を行えるようにするための国内ステークホルダー(地方自治体や病院)との関係強化
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捜索救助用ヘリコプターの運航体制の改善と、SARに必要な装備や資材の維持管理
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緊急物資の輸送と被災地への支援
これらの取り組みが、世界各地で災害に強いコミュニティづくりにつながることを願っています。JTグループは今後も、さまざまなステークホルダーと協力しながら、コミュニティインベストメントにおける重点領域として、災害分野での課題解決に取り組んでいきます。

国内での主な取り組み
環境保全
私たちは、事業活動が環境に与える影響を軽減するための環境保全プログラムを通じ、地元コミュニティと従業員が共に恩恵を受けられるよう努めています。2020年には、事業を展開する22の国々で、34の環境保全プログラムを支援しました。
私たちの活動の効果を測定することで、プログラムの継続的改善につながります。2020年は、1カ国の現地法人から「環境保全」関連プログラムのBusiness for Societal Impact (B4SI)*フレームワーク用いたインパクトデータの報告がありました。
国内では、全国8カ所で、森林保全の取り組み「JTの森」を実施しており、従業員にもボランティア活動の機会を提供しています。
国内での主な取り組み
その他の取り組み
2020年1月に立ち上げた本プロジェクトでは、包摂的かつ持続可能な地域社会の発展に向けて、重点領域である格差是正、災害分野、環境保全および関連するSDGsに取り組むさまざまな団体の活動を支援しています。
SDGs貢献プロジェクトは、従来の「JT NPO助成事業」の後継事業です。JT NPO助成事業では、過去21年間で延べ1,202の民間非営利組織(NPO)に総額14億9,000万円の助成を行ってきました。本プロジェクトでは、対象団体の応募要項を営利/非営利にこだわらず原則法人格を有する団体に拡大し、助成額の上限を増額するとともに、年2回(6月・12月)応募申請を受け付けています。
2020年には福島中央テレビやさっぽろレインボープライド実行委員会など26団体に4,400万円を超える助成を行いました。
ボランティア活動
ボランティア活動は、従業員、私たちの事業、地域コミュニティの3者に、相互の恩恵をもたらしてくれます。また、従業員がその知識とスキルを活かすことで、彼らが暮らし、生活の糧を得ているコミュニティにプラスの影響を与えることもできます。
JTグループでは、従業員がボランティア活動に参加することを積極的に奨励しています。ボランティア活動の機会(コミュニティインベストメントプログラムやイベントへの参加)や、必要なリソース(従業員からの寄付、会社からのマッチング拠出、ボランティア休暇、物的支援)を提供しています。
2020年には、新型コロナウイルス感染拡大による制約がある中で、従業員と地域社会を安全に保つための対策を
取りつつ、世界各国で1万1,477名の従業員が、延べ2万4,088時間のボランティア活動を行いました。
ボランティア活動の多くは、従業員のエンゲージメントとスキル構築を目指す人事戦略の実現にも寄与しています。2020年には、「格差是正」関連のボランティア活動に参加した従業員を対象にアンケートを実施しました。473名の
従業員が、これらのボランティア活動が日常業務に役立つスキルを身に付け、仕事の満足度を高め、ボランティアへの関心を高めるのに役立ったと回答しました。
森林保全活動ボランティア
国内でも、全国8カ所の森林保全の取り組み「JTの森」を通じ、元気な森づくりを支援するとともに、ボランティア活動に参加する従業員に、環境保全の大切さを体感してもらうようにしています。2020年には、201名*の従業員がボランティア活動に従事しました。ボランティア活動後のアンケートでは、その多くがボランティア活動に参加することで、環境保全を意識した行動をするようになり、働くことへの満足感が高まったと答えています。
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新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、参加人数を例年の5分の1に抑えました。
JTの森で森林保全活動ボランティアに参加した従業員からのフィードバック:
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100%が、JTグループで働くことへの誇りにつながったと回答
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96%が、環境保全の重要性を認識し行動に変化が生じたと回答
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90%が、知識やスキルの習得につながったと回答

ケーススタディ:湯前町での森林保全活動
2020年7月、熊本県球磨郡湯前町で、記録的豪雨による土砂崩れから大きな被害が発生し、私たちは新型コロナウイルス感染拡大の最中に町の再建を支援するにはどうすればよいかという課題に
直面しました。
湯前町は「JTの森」の対象地域のひとつで、2009年から森林保全活動を行っています。私たちの活動は、さまざまな動植物が生息するこの貴重な森の保全と、地元の林業の維持に役立っています。
災害発生時には通常、支援金と人的支援を提供していますが、2020年は新型コロナウイルス感染症のため、ボランティア活動はできませんでした。そこで私たちは、安全な方法で地元コミュニティを支援するため、マッチングによる寄付プログラムを立ち上げました。これは、従業員の寄付金額と同額の寄付をJTも行うというものです。
このプログラムにより、(従業員の寄付と会社からの同額の寄付を合わせて)総額204万円が集まりました。この寄付金は、湯前町の貴重な森林周辺の道路再建に充てられる予定です。

海外での取り組み
新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染拡大により、コミュニティインベストメントに対する新たなアプローチが必要となりました。地域社会が抱える各々の課題やニーズに応えるため、従来の慣行にとらわれず、新たな方法を検討し、取り組みに反映しています。JTグループでは、事業を展開する国や地域で感染拡大防止に取り組むとともに、危機に瀕する地域社会からの要請に応え、生活物資の支援や寄付などを行っています。
また、これらの「緊急支援」活動に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響長期化により生じる課題の解決や、今後の「より良い復興」(Build Back Better)に向けた支援活動に取り組んでいます。
海外たばこ事業では、多くの国で新型コロナウイルス関連の取り組みに対する資金援助に注力しています。私たちは、新型コロナウイルス感染症の検査能力拡大、社会的に立場の弱い人々への食料と飲料水の提供、高齢者や障がいのある人々への支援など、さまざまなプロジェクトに携わってきました。今後も引き続き必要なサポートを提供していきます。
国内では、感染拡大防止や、地域社会からの要請に応える形での生活物資の支援や寄付など、緊急支援に取り組むとともに、「より良い復興」に向けた「社会的弱者・生活困窮者支援」、「エッセンシャルワーカー支援」、
「地域産業支援」、「文化芸術活動支援」等の支援活動に取り組んでいます。
これらの取り組みの一環として、私たちは、最前線の医療従事者を守るため、パートナー団体であるARROWSを通じた「今後に備えた感染防止対策」への支援を行ってきました。
2020年を通じARROWSは、物資が不足した医療機関にマスクを配布し、クラスターが発生した病院への支援等を実施してきました。今後もARROWSは、医療機関、避難所、レスキュー隊員の感染防止対策に注力していきます。
ケーススタディ:コロナ禍における「ウォーキングラリーxTable for Two(TFT)」
JTでは、2010年から「Table for Two(TFT)」プログラムに参加しています。これは、JT本社の社員食堂において従業員が購入したTFTメニュー1食につき、給食1食分の金額をアジア・アフリカの子供たちのために寄付する取り組みです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年には在宅勤務が従業員にとっての標準の勤務形態となり、社員食堂の利用が減少しました。しかしこのような状況においても、従業員が参加しやすい健康イベントに社会貢献(寄付)をコラボすることで、このプログラムを継続することができました。2020年10月の1カ月間、1人が1日8,000歩歩くごとに、アジア・アフリカの子供たちへ給食1食分の金額(20円)を会社が寄付する「ウォーキングラリーx TFT」を実施しました。全国1,995人の従業員が個人またはチームで参加し、健康的に楽しみ競い合いながら、最終的にはTFTに 給食2万5,580食分を寄付することができました。なお、TFTより当社の2020年の支援(社員食堂での寄付を含む)に対して、「プラチナパートナー」として認定いただき、感謝状を受領いたしました。
「ウォーキングラリーx TFT」に参加した従業員からのフィードバック
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51%が、社会貢献に対する意識が高まった、社会貢献にも取り組む自社を働きがいのある会社だと思ったなど、社会貢献に対する効果があったと回答
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44%が、同僚や上司と会話する機会が増え、コミュニケーション力やチームワーク力が向上したなど、仕事面での効果があったと回答
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41%が、健康的になり幸せを感じることができた、目標を達成することへの自信がついたなど、生活面での効果があったと回答

