環境と事業活動

私たちは事業活動が環境に与える影響を軽減するため、ビジネスやステークホルダーにとって最も重要な環境課題に焦点を絞って取り組んでいます。現在、気候変動対策、持続可能な資源の利用、責任ある廃棄物管理などの取り組みを実施しています。
エネルギー・温室効果ガス・気候変動への取り組み
地球温暖化、異常気象など、気候変動とその影響は社会そして私たちが直面している最も深刻な環境課題です。私たちの製品は農産物を主要原料としており、原料調達を含むサプライチェーンにおいて、また事業活動そのものにとっても重大な影響が懸念されます。
私たちは気候変動に関する国際的な枠組みであるパリ協定に基づき、事業活動由来の温室効果ガス(GHG)排出量の削減に取り組んでいます。長期的にはバリューチェーン全体でGHG排出量が実質ゼロとなるネットゼロを達成することを目指しています。
JTグループでは世界的な平均気温上昇を2℃より十分低くたもつことを掲げるパリ協定に賛同しています。私たちのパリ協定に関する考えやステートメントはこちらからご覧いただけます。
ネットゼロに向けた取り組み
JTグループは、2030年までに事業活動におけるカーボンニュートラルを実現し、2050年までにバリューチェーン全体でのGHG排出量ネットゼロを達成することを目指しています。これらの目指す姿の実現に向け、科学的根拠に基づき、2030年に向けた意欲的な削減目標を設定しました。この目標については2022年にSBT(Science Based Targets) イニシアティブの認定を取得しており、2050年に向けたネットゼロ目標についても認定取得を目指しています。
グローバルなインフラや技術の進歩を踏まえ、結果につながる具体的なGHG削減策を通じて、脱炭素社会実現のため社会的責任を果たしてまいります。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
気候変動は企業の中長期的な事業運営に影響を及ぼす可能性が示唆されており、これに伴う金融市場の不安定化が近年懸念されています。2020年12月、私たちはTCFDの提言への賛同を表明しました。
TCFD提言の主要項目のひとつにリスク管理があります。気候変動のリスクについてどのように特定、評価し、それを低減しようとしているかについて、これらを包括的なリスクマネジメントの体制に組み入れ、分析し、開示していくことを企業に推奨しています。TCFD提言に準拠する形で、気候変動に伴う長期の事業リスクについて、JTグループでは複数のシナリオ(1.5℃、2℃、4℃)を用いたシナリオ分析を実施しました。この複数のシナリオに基づく分析は、TCFDによる提言とも整合するものです。6つの主要なリスクファクターを選び、分析した結果、「脱炭素社会への移行に伴う炭素税負担等の増加」と「葉たばこ生育環境の変化」という2つの主要な気候関連リスクを特定しました。
ガバナンス
気候関連課題は、JTグループの事業活動にとって戦略的重要性が高い問題です。グループ全体を対象とする統合型リスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)プロセスにより、たばこ事業にとって気候関連リスクが一つの最重要リスクであることを特定しました。気候関連リスクは、国・地域レベルでのリスクの洗い出しや評価においても検討します。取締役会による管理が重要となるため、特に事業戦略に影響を与える気候関連課題について、四半期ごとの取締役会に取り上げています。
ガバナンス体制についての詳細はコーポレート・ガバナンスをご覧ください。
戦略
気候変動シナリオ分析に基づき、2つの主要リスクを特定しました。一つは脱炭素社会への移行に伴う炭素税負担等の増加、もう一つは葉たばこ生育環境の変化です。こうしたリスクに対しては、バリューチェーン全体を対象とした気候変動対策と継続的改善により軽減に努めています。
環境への取り組み全般についてはこちらをご覧ください。
リスク管理
JTグループではERMプロセスを通じ、気候関連リスクを検討し、リスク軽減・管理策を定めています。また、現在実施している国別気候変動シナリオ分析も踏まえた、それぞれの国・地域におけるリスクの洗い出しや評価、行動計画策定の際にも、これらのリスクを考慮しています。事業全体のリスクとそれぞれの国・地域でのリスク評価とを照合し、対応の優先順位を明確化します。
指標と目標
JTグループ環境計画2030では、2030年までに自社事業からのGHG排出量を2019年比で47%削減することを目指しています。また、グループ全体を対象とした気候変動シナリオ分析に基づき、より長期のGHG排出量削減目標を定めるとともに、再生可能エネルギーからの電力の活用についての目標も定めています。
詳しくはJTグループ環境計画2030、環境データ/第三者検証、およびデータの算定・連結方法 (英語)をご覧ください。
気候シナリオ分析について
JTグループでは、事業に対し財務的・戦略的に大きな影響を及ぼす可能性のある様々なリスクファクターについて検討しています。これにより、以下の2つの主要リスクを特定しました。
- 1.
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脱炭素社会への移行に伴う炭素税負担等の増加
- 2.
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葉たばこ生育環境の変化
バリューチェーン全体を通じて気候変動対策の取り組みやプログラムを継続的に実施することで、この2つのリスクについても緩和できると私たちは結論付けています。このような対策の着実な実行により、財務上の影響やそれに伴う事業活動の停滞回避に努めます。
移行リスク
リスクの種類 | リスクの名前 | パラメータ | 時間軸 | 影響の大きさ |
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政策 | カーボンプライシング | 炭素税 | 長期 | 中~低 |
影響の詳細/財務インパクト/対応策
影響の詳細
炭素税引き上げにより、葉たばこをはじめとする原材料・サービスの調達コストが増加し、ひいてはJTグループ全体の事業コストが増加する可能性がある。農業バリューチェーンの各段階(農薬、農業機械、葉たばこ加工機械、保管・流通など)で使用する原材料や二次原料、サービスに炭素税が課せられた場合、JTグループは追加コストを負担するかあるいは製品価格に転嫁することとなる可能性がある。
財務インパクト
7~150億円
対応策
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設備投資によるエネルギー消費の削減
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省エネと再生可能エネルギーの積極活用
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事業活動に使用する車両の脱炭素化と、サプライヤーの気候関連リスク理解向上のための支援
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物理的リスク
リスクの種類 | リスクの名前 | パラメータ | 時間軸 | 影響の大きさ |
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慢性 | 葉たばこ生育環境の変化 | 気候変動による葉たばこ収量の変化 | 長期 | 中 |
影響の詳細/財務インパクト/対応策
影響の詳細
大気中二酸化炭素濃度の変動、気候変動に伴う葉たばこ病害虫の発生・広がりの変化、気温上昇と異常降水、水不足など、葉たばこ生育環境の変化は、葉たばこを含め、JTグループにとって重要な天然資源の確保と質に影響を与える可能性がある。これらのリスクは複数の葉たばこ調達国で発現する可能性がある。その結果、葉たばこ調達コストが増加する可能性がある。
財務インパクト
80~370億円
対応策
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特定された気候変動関連の影響を踏まえた葉たばこ調達国変更
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気候変動対応策の実施
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スマート農業や育種
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葉たばこ産地における収量増加に向けた取り組み
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国別気候シナリオ分析
気候変動に関わる課題や潜在的なリスクをより深く詳細に理解するため、たばこ事業では、国別気候シナリオ分析を実施しました。
第一段階として、2020年から2022年にかけて11カ国の気候シナリオ分析を完了しました。葉たばこ調達、製造、販売という異なるオペレーションが複数存在する国を最優先に国別シナリオ分析を実施しています。また、3年間にわたって一貫したリスクモデルと地球温暖化シナリオを適用しました。
河川の氾濫、海面上昇、熱ストレス、降雨量の変動、水ストレス、干ばつ、ハリケーン、異常降雨、霜などの指標を用いて、気候変動に関わる課題にさらされるリスクやそれに対する脆弱性を評価しました。リスクについては、科学的な研究や文献をもとに気候変動モデルを用いて評価し、脆弱性については、各国の現地従業員へのインタビューを通じて評価しました。評価にあたり、代表的濃度経路シナリオ(RCP2.6、RCP4.5、RCP8.5)を用いています。
気候変動は、たばこ事業の最重要リスク(ELR:Enterprise Level Risk)と特定されています。各ELRに対しては、たばこ事業の役員が、オーナーとして当該リスクの評価と管理の監督と責任全般を担っています。ELRの最終責任者はCEOです。
事業活動由来のGHG排出量
JTグループ環境計画2030に定める通り、JTグループはGHG排出量の削減に取り組んでいます。2022年には目標を従来以上に意欲的なものに更新し、2030年までに事業活動由来のGHG排出量を2019年比で47%削減し、2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロにすることを目指しています。JTグループでは、バリューチェーン全体でサステナビリティに対する共通目標を構築し、GHG排出量削減に向けた取り組みを加速しています。目標達成に向け、現在はエネルギー使用量とGHG排出量の削減を同時に実現できる、再生可能エネルギーの使用割合の引き上げやエネルギー生産効率の向上に取り組んでいます。今後は、主な施策としてエネルギー効率および再生可能エネルギー使用率のさらなる向上や、業務用車両に使用するエネルギーの環境配慮型へのシフト、またその燃費効率向上などの取り組みを行っていく予定です。
具体的な目標として、2030年までに事業活動で使用する電力の50%、2050年までに100%を再生可能エネルギー由来とすることを掲げています。
事業所では、自家発電設備の導入や再生可能エネルギーの購入により、目標達成を目指しています。
目標達成に向けて引き続き再生可能エネルギーの導入を推進しています。実現可能性が見込まれ、かつコストや管理効率などの課題もクリアできると判断した場合は、自家発電施設に対する設備投資を行っています。今後も再生可能エネルギー由来の電力使用率を高めるための投資を続ける予定です。事業計画策定や、JTグループ環境計画2030(2030年までに自社の事業活動をカーボンニュートラルにし、2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出量をネットゼロにする)検討の際も、再生可能エネルギー導入の見込みを織り込んでいます。GHG排出量削減を加速するため、電力会社が提供する再生可能エネルギーを全部あるいは一部活用する電力メニューやグリーンエネルギー証書、再生可能エネルギーの電力購入契約を活用しています。ネットゼロ達成にむけたロードマップは以下をご覧ください。

定量目標に対する進捗
2022年末時点で、たばこ事業で使用する電力の31%を購入または自家発電した再生可能エネルギーで賄っています。この数値は、2022年度のJTグループ全体の電力使用量の24%に相当します。今後に向け、再生可能エネルギー由来の電力についてさらなる使用率向上のための計画を策定しました。

JTグループのたばこ関連工場では、2015年から2022年までの間に、投資を抑えながらも効果の高い、エネルギー使用量削減に関する取り組みを269件実施してきました。これにより、約7,000トン以上のGHG排出量削減を達成し、200万米ドル以上のコスト削減(投資回収期間は平均3カ月)に成功しています。
営業車や配送用トラックなどの業務用車両に由来するGHG排出量も重要な課題です。JTグループではすべての事業所に対し、より環境に優しい車両の導入、出張計画や配送ルートの変更、従業員の運転や通勤のあり方の改善を奨励しています。たばこ事業では施策の一環として、物流・配送車両に由来する排出量削減に特化したグリーンモビリティプログラムを展開しています。
購入する原材料・サービスに由来するGHG排出量
JTグループ環境計画2030では、購入する原材料・サービスに由来するGHG排出量の削減を掲げています。2022年にはGHG排出量(スコープ3)の目標を更新し、2030年までに購入する原材料・サービスに由来するGHG排出量を2019年比で28%削減し、2050年までにバリューチェーン全体でGHG排出量ネットゼロ達成を目指すこととしています。
日本では葉たばこ農家と長年にわたり信頼関係を築いてきました。農家やJTグループにとってのみならず、地球環境にとっても、このような信頼関係は相互に利益をもたらす原動力となっています。例えば、葉たばこ農家、機械メーカー、JTの協業による乾燥機刷新により、葉たばこ乾燥工程で使用するエネルギーの効率向上に成功しただけでなく、GHG排出量や枯渇性資源使用量も削減できました。また、葉たばこ農家にとってはコスト削減と品質向上の両立につながっています。この取り組みは、葉たばこを原料として使用するたばこ事業にとってプラスの影響を生むと同時に、葉たばこバリューチェーンにおける環境負荷軽減にも寄与するものとなりました。2022年末時点で、この乾燥機は日本で828台導入されています。乾燥効率の向上によりこの取り組みをさらに進化させ、葉たばこ乾燥工程を一層持続可能な、エコフレンドリーなプロセスにしようと考えています。
私たちは、火力乾燥用設備や熱処理の仕組みを改良するなど、継続して葉たばこ乾燥効率の向上を進めています。これらは葉たばこの品質向上に役立つだけでなく、乾燥用木材の使用量削減にもつながります。また、サプライヤーと協業で実施するアグロフォレストリープログラムを通じ、葉たばこ乾燥工程に使用する木材資源の確保にも取り組んでいます。葉たばこ調達国であるザンビア、タンザニアでは植林を推進し、その木材資源を活用する仕組みをつくることで、再生可能な資源の確保を目指しています。
その他の取り組みについて詳しくは、JTインターナショナルのサステナビリティサイト(英語)をご覧ください。
定量目標に対する進捗
2022年末時点で、購入する原材料・サービスに由来するGHG排出量を2019年比で11%削減しました。葉たばこ乾燥効率の改善による、購入した葉たばこ由来のGHG排出量削減の取り組みや、パッケージの軽量化など葉たばこ以外の材料由来のGHG排出量を抑制したことが主な削減要因です。

Science Based Targets (SBT)

JTグループ環境計画2030で掲げる2030年の事業活動由来のGHG排出量削減目標について、気候変動の1.5℃シナリオに基づく目標として、2022年にSBT(Science Based Targets)イニシアティブによって認定されています。
自然資源と生物多様性
水資源
JTグループ環境計画2030は、事業における水使用量の削減、およびサプライチェーンでの水リスク管理を推進することで、国際的な水資源管理を支援していくことを掲げています。私たちは、2030年までに、たばこ事業における水使用量を2015年比で15%削減することを目指しています。
水資源の需要は世界規模で高まっており、水の供給、水質、洪水、干ばつ、法規制などの課題は、社会にとってもJTグループの事業にとっても潜在的なリスクとなり得ます。
JTグループの事業にとって水資源は不可欠なものですが、主要事業であるたばこ事業においては、葉たばこ耕作に必要な水の大半は雨水で賄っており、葉たばこ加工や製品製造には大量の水を必要としていません。
私たちは、水リスクへの対応と効果的な水資源の管理を促進するための取り組みの一環として、グループ全工場における水リスク評価を完了することを目標にしていました。予定通り、2020年に全工場で水リスク評価を完了し、現在は1次評価結果を踏まえた再評価を行っています。私たちが実施する水リスク評価は、水資源へのアクセス、水質、規制、洪水や干ばつなどの自然災害、将来予想される水ストレス状況を指標としています。評価結果をもとに、水リスクの軽減や全般的な水および水資源の管理向上のために必要な行動計画の策定を行っています。
2022年のCDP水セキュリティにおいては、リーダーシップレベルであるA-評価を獲得しました。引き続き、事業における水使用量の削減、およびサプライチェーンにおいて水リスク管理を推進することで、国際的な水資源管理を支援していきます。
水資源管理について詳しくは、JTインターナショナルのサステナビリティサイト(英語)をご覧ください。
定量目標に対する進捗
水資源の効率的利用などの取り組みによって、2022年時点でたばこ事業における水使用量を2015年比で23%削減し、2030年までにたばこ事業における水使用量を2015年比で15%削減する目標を、大幅に前倒しで達成することができました。

森林資源

JTグループ環境計画2030では、サプライチェーンにおける木材資源の持続的供給の確保し、森林保護・保全に更に貢献することを目指す姿に掲げています。特に注力しているのは、生産性と有用性の高い植林地を整備しモニタリングしていくことです。それにより、葉たばこ生産に十分かつ再生可能である木材の確保が可能となります。また、乾燥効率向上による木材消費削減にも注力しています。
森林資源は、私たちのビジネスと社会全体にとって重要です。森林資源のさらなる保全にむけて、現在、JTグループ環境計画2030を見直しています。
定量目標に対する進捗
植林と木材生産の推進
JTグループでは、葉たばこ耕作地での植林の状況をアグロフォレストリーアプリで記録しています。このアプリで記録した2022年収穫シーズン(2021年11月~2022年2月)のタンザニア、ザンビア、ブラジルにおける実際の植林データから、2029年収穫シーズンには、使用する木材の98%を再生木材で賄えるものと見込んでいます。
苗木生産の改善
JTグループが設定した「森林に関する最低限の基準」に準拠した葉たばこ農家の増加が、苗木の品質と均質性の向上につながっています。質の高い苗木は、豊かな植林地の確立と樹木の成長最大化に必要不可欠です。
森林資源のための取り組みについて詳しくは、JTインターナショナルのサステナビリティサイト(英語)をご覧ください。
生物多様性
生物多様性の責任ある管理は、JTグループにとっての重要事項です。JTグループでは、生物多様性に対する影響が最も大きい葉たばこ耕作における生物多様性保全に注力しています。JTグループの葉たばこ生産基本方針では、環境負荷の低減、資源の効率的な利用、生物多様性への配慮に努めることを定めています。生物多様性は、葉たばこのサステナビリティフレームワークの重点分野の1つに掲げられています。また、JTグループは、賛同企業や団体が実施すべき生物多様性に関する具体的な活動をまとめた意欲的な行動指針である「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」に賛同しています。
JTグループ生物多様性宣言については、こちらからご覧ください。
生物多様性リスクアセスメント
2022年に、TNFD v0.3と国連自然保護連合(IUCN)のガイドラインに基づいて、自社事業、上流の活動、下流の活動を評価範囲として、たばこ事業における生物多様性への影響と依存についての初期リスクアセスメントを実施しました。
リスクアセスメントをおこなうにあたり、原材料の調達、製造、廃棄に分類し、事業活動ごとに切り分けて自然資源への影響を定性的に評価しました。さらに、生物多様性は特定の地域や国の天然資源とも密接に関係しており、事業拠点の地域を踏まえて、自然資源に与える影響範囲と、自然資源への影響の重大性を評価しました。これにより、私たちの事業において生物多様性への影響が高いと想定される場所を特定することができました。また、生物多様性への依存については、影響評価と同様の手法を用いて分析をおこない、依存度が最も高い項目と地理的な場所を特定しました。評価にあたっては、ENCORE*、生物多様性指数(NBI)、環境パフォーマンス指数(EPI)を使用しています。
リスクアセスメントを通じて、たばこのサプライチェーンにおける生物多様性への影響として、土地利用変化、水質汚染、土壌汚染を引き起こす可能性があることを特定しました。また、生物多様性への依存として、洪水や暴風雨の防止、土地の安定化、水供給といった生態系サービスに対する依存度が高いことを特定しています。
今後は、全ての事業を対象とした定性的・定量的なリスクアセスメントを段階的に実施することで、重点分野を特定し、生物多様性に関する目標と計画の設定を目指します。
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Natural Capital Finance Alliance (Global Canopy, UNEP FI, and UNEP-WCMC) (2022). ENCORE: Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure. [On-line], [December, 2022], Cambridge, UK: the Natural Capital Finance Alliance. Available at: https://encore.naturalcapital.finance. DOI: https://doi.org/10.34892/dz3x-y059.
生物多様性の保全にむけた取り組み
リスクアセスメントを踏まえた施策を進めるにあたり、Science-Based Targets for Nature(SBTN)ガイダンスに基づくAR3Tフレームワークが示すミティゲーション・ヒエラルキーを取り入れています。下記は取組の一例です。
Avoid(回避)
JTグループでは、毒性の高い農薬(HHPs: highly hazardous pesticides)ではなく、より安全で環境にも配慮した農薬に置き換えています。
2022年1月には、作物保護剤(CPA)の残留に関する社内基準を更新し、2022年に耕作された葉たばこ中のHHPs残留レベルに関する制限を設けました。成分分析をおこなった結果、HHPs残留レベルが一定基準を超過している場合は購入しない方針とすることを、2021年2月にすべてのサプライヤーに対して正式に告知しています。さらに私たちは、毒性の高いCAPの使用を避けて、より安全な農薬を選択し使用することで、環境汚染を未然に防ぐことだけでなく、人や動物が有害な農薬に暴露しないようサプライヤーに対して呼びかけをおこなっています。
Reduce(削減)
2022年、私たちはプロダクトスチュワードシップ、資源循環、廃棄物に重点を置いた新しいサステナビリティガバナンスモデルを導入しました。これは、製品とそのパッケージの安全性、環境および社会への影響をライフサイクルのすべての段階において管理し、製品の資源循環、効果的な廃棄物管理システムを運用することなどにより廃棄物を削減することを目的としています。私たちは、以下の取り組みを通じて、製品と包装の環境影響を低減します:
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ソリューションの設計
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責任ある回収と廃棄の促進
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消費者の意識と教育
事業におけるプラスチックを含む容器包装材の使用量を削減するとともに、2025年までに88%、2030年までに100%を再使用または再生利用可能な容器包装材にすることを目指しています。また、2025年までにたばこ事業における容器包装材総重量のうち、20%相当のリサイクル材の使用を目指しています。
Regenerate(再生)
生物多様性の再生と森林保全活動を積極的に進めています。ザンビアの「シシャンバ森林保全プロジェクト」では、ミオンボ林の持続可能な管理を目的として、防火管理や自然再生支援などの、森林の保全活動を推進しています。この取り組みによって、シシャンバ地域コミュニティが責任を持って森林資源を利用しつつ、持続的に管理できるようになりました。
Restore(復元)
ブラジルでは、研究機関や環境教育団体、国立社会経済開発銀行などと提携して300ヘクタール以上の自然保護区の復元に取り組んでおり、JTグループが直接契約する葉たばこ農家も多く取り組みに参加しています。このエリアには、国立自然保護区のほか、葉たばこ耕作農家が所有する土地も一部含まれています。
2018年に取り組みを開始し、ピライー・ド・スー国有林の35ヘクタールの松の木を在来品種に植え替え、自然景観の復元に貢献しました。また、地元の大学生33名に生態系修復のトレーニングを行いました。
自然保護区の200の小農場において約14万本の在来品種の苗を植え、20万メートルの保護フェンスを設置し、195ヘクタール以上が復元され、復元目標の達成まで残り6ヘクタールに迫っています。また、ポンタ・グロッサ市内にあるメイア・ルーア自然保護区の75ヘクタールも復元しています。
本プロジェクトは、2022年11月に資金提供パートナーである国立社会経済開発銀行(BNDES)の監査と承認を受け、2023年5月に完了する予定です。
Transform(変革)
JTグループは、国際的な非営利機関であるLIFE Instituteと2017年からパートナーシップを締結し、生物多様性への影響を測定し改善しています。
ビジネスと生物多様性のためのLIFE手法は、ブラジルにおける葉たばこビジネスの持続可能性を高めることに加え、生物多様性への理解や取り組みを深めることにも有効です。LIFE Instituteとのパートナーシップの重要な利点は、環境データの整理と標準化によって、投資判断が証拠に基づいて行われるようになったことです。これにより、企業はより大きな環境への便益を生み出す投資を、より低いリスクでおこなうことが可能となりました。
LIFE Instituteとのパートナーシップを受け、LIFE手法を通じて、生物多様性の保全の取り組みをグローバルでスケールアップするという野心を共有する他社とともに、LIFE Coalition for Business and Biodiversityを立ち上げました。手法の指標に関連した生物多様性の保全につながる、カーボンフットプリント、水利用、廃棄物、土地利用、エネルギー利用に関するベストプラクティスの共有をおこなうなど、グループで取り組みを加速させています。
葉たばこサプライチェーンに関して、こちらのJTウェブサイトをご覧ください。また、生物多様性に対する取り組みについての詳細は、JTインターナショナルのサステナビリティサイト(英語)をご覧ください。
廃棄物
廃棄物、特にプラスチック廃棄物に対する社会やステークホルダーからの懸念が高まっています。また、事業運営の観点からも、廃棄物は管理に係る費用や処理費用など、直接的あるいは間接的な負担が発生するものとして認識されています。
私たちは、原材料やサービスの受領から使用済み製品や包装材の廃棄にいたるまで、廃棄物が事業の各段階に与える影響に着目しており、廃棄物はJTグループ環境計画2030における重点的取り組み領域の1つとなっています。JTグループでは「Reduce(排出抑制)、Reuse(再使用)、Recycle(リサイクル)」の考え方を廃棄物管理の根幹に据えています。廃棄物削減目標を達成することは、資源の効率的利用を可能にし、環境負荷の軽減およびコストの削減につながると私たちは考えています。
私たちは2030年までに、たばこ事業における廃棄物発生量を2015年比で20%削減するという目標のもと、資源の効率的利用および拠点の垣根を越えた画期的施策を展開しています。
定量目標に対する進捗
工場における廃棄物削減や、原材料再使用などの取り組みにより、2022年時点でたばこ事業における廃棄物発生量を2015年比で22%削減し、2030年までにたばこ事業における廃棄物発生量を2015年比で20%削減する目標を、大幅に前倒しで達成することができました。

製品および容器包装
JTグループ環境計画2030は、事業や製品に由来する廃棄物による環境負荷のさらなる低減を目標として掲げています。事業由来の廃棄物および容器包装を含む製品由来の廃棄物の削減については、上述の通り、取り組みを進めています。より環境に配慮した製品やサービスの提供を実現するため、JTグループでは「Reduce(排出抑制)、Reuse(再使用)、Recycle(リサイクル)」の考え方を徹底し、拠点の垣根を越えたさまざまな取り組みを行っています。
詳しくは、プロダクトスチュワードシップ、資源循環、廃棄をご覧ください。
国内の環境負荷状況
JTグループでは、事業活動で利用するエネルギー、水、原材料などの状況や事業活動の結果排出される温室効果ガス(GHG)、排水、廃棄物などの状況を把握し、環境負荷軽減に取り組んでいます。
たばこ製造におけるエネルギーと水の利用
原料工場では、葉たばこに熱と水分を加え、葉脈を分離して葉肉を取り出し(除骨)、葉肉を均一に配合したあと、熱を加えて貯蔵・熟成に適した水分量に調整します。製造工場では、各種の原料に熱と水分、香料を加えてよく混ぜ合わせ、細かく刻みます。そのあと、熱を加えて水分量を調整し巻き上げます。これらの工程において機械を動かすために電気を使用します。

冷凍うどん製造におけるエネルギーと水の利用
冷凍うどんは、小麦粉や水などの原材料を混ぜ合わせた生地を熟成、麺状にカットしたあと、熱湯でゆで上げ、流水で冷やして、風味やコシを保つため急速冷凍してつくられています。工場では、ゆで上げ・冷却の工程で水や熱エネルギーを使用し、冷凍工程や自動化された機械を動かすために電気を使用します。

国内の取り組み事例
サステナビリティはJTグループの事業活動に深く根付いています。私たちはエネルギー効率、温室効果ガス(GHG)排出量の削減、効率的な水使用、廃棄物削減に重点を置き、環境負荷の最小化を図っています。また、グローバルの取り組み事例については、JTインターナショナルのサステナビリティサイト(英語)をご覧ください。
環境負荷低減への取り組み
・国土交通省より「エコレールマーク取組企業」として認定

JTグループの物流部門では、モーダルシフトの推進および積載率の向上に努め、GHG排出量の削減を図っています。JTは環境にやさしい鉄道貨物輸送への積極的な取り組みが評価され、国土交通省より「エコレールマーク取組企業」として認定されています。
・グリーン電力証書・熱証書の購入
JT北関東工場は、一部たばこブランドの製造に自然エネルギーを使用しています。この取り組みは、日本自然エネルギー株式会社から発行されるグリーン電力証書・熱証書を購入することで、グリーン電力・熱が使用されたと見なされるというものです。これにより、2022年は電力240万kWh、熱480万MJを自然エネルギーで賄いました。
・廃棄物由来の発電による電力供給

JT東海工場は、電力会社と廃棄物収集運搬会社と協業し廃棄物由来の発電による電力供給を開始しました。工場から排出されたたばこ製品包装材や刻たばこなどの廃棄物を燃料として発電された電力を、電力会社を通じ工場へ供給する循環型の仕組みです。
・物流の脱炭素化に向けた協創
TSネットワークは、株式会社日立製作所とともに、物流の脱炭素化に向けた協創を開始しました。2022年9月より電気トラックの試験走行を行い、走行距離と消費電力などのデータ分析やシミュレーションを通じて、TSネットワーク物流拠点における電気トラックに置き換え可能なガソリン車の台数の検証および配送・充電オペレーションの構築を進めています。また、物流拠点における太陽光発電パネルの設置調査等を通じて、脱炭素化ロードマップを策定し、段階的な脱炭素化に向けて取り組んでいます。

・資源循環(サーキュラーエコノミー)への取り組み
JTおよびTSネットワークは、サプライヤーと協業し流通過程で発生する使用済みの段ボールの全量を古紙として回収し、段ボール製造に活用する仕組みを確立しました。
JTグループとサプライヤーの協業により実現された包括的なリサイクルであり、使用済み段ボールの廃棄量を削減するとともに、リサイクル包材のさらなる利用促進につながります。

・JT医薬総合研究所 横浜リサーチセンター 横浜市から「令和2年度3R活動優良事業所」として認定

横浜リサーチセンター

分別環境が整備されている横浜リサーチセンターのごみ箱エリア
2021年1月、JT医薬総合研究所 横浜リサーチセンターは、横浜市より「令和2年度3R活動優良事業所」として認定されました。横浜市では、事業系廃棄物の分別排出や3R活動に顕著な功績のあった事業所等を「3R活動優良事業所」として認定しており、JT医薬総合研究所 横浜リサーチセンターの活動が評価されたことによるものです。
汚染防止・化学物質管理
GHG排出量・水使用量・廃棄物発生量の削減のみならず、関係法令に対応したガイドラインなどを定め、環境保全に努めています。
・土壌汚染対策
JTグループは、2007年度までに所有地を対象とした自主的な土壌履歴調査を完了しています。土壌調査が必要と認められる物件を対象に調査を行い、土壌汚染対策法の基準を超える汚染が検出された場合には、関係行政機関と調整のうえ、浄化処理など適正に対応しています。
・化学物質の適正管理
事業所周辺の汚染防止や従業員の安全を確保するため、事業活動で使用する化学物質について、22の関係法令に対応した「化学物質管理ガイドライン」を定め、適正管理に努めています。
・PCB廃棄物の適正管理
PCBを含んだトランスやコンデンサ、蛍光灯安定器などの廃棄物は、法令に基づいた適正管理・保管を行い、処理を進めています。
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