加工食品事業
事業Purpose
食事をうれしく、食卓をたのしく。
業界概要
日本の加工食品市場は、共働き世帯の増加やライフスタイルの変化を背景に、調理の簡便化や時短化に対するニーズが高まっていることに加え、加工食品が持つ保存性や利便性といった価値が日常生活の中で改めて評価され堅調に推移してきました。
一方、足元では人件費や物流費、原材料費等の高騰により、加工食品メーカーを取り巻く厳しいコスト環境が継続しており、多くの加工食品メーカーにおいて価格改定が実施されています。また、流通各社でのプライベートブランド製品の拡大に伴い、お客様が家庭用加工食品を購入される売り場における商品構成も変化しています。
お客様からの調理の簡便化や時短化、おいしさ、安全性といった期待が引き続き存在している一方で、健康への配慮、代替たんぱく質や植物由来素材への関心の高まり、アレルギー対応や各国の食文化への配慮といったニーズの多様化等、期待される役割は拡大しています。
海外市場では、欧米やアジア諸国を中心に、日本食への関心が引き続き高まっており、日本食の加工食品市場についても拡大しています。一方で、嗜好や規制、流通構造は各国で異なることから、現地の法規制やニーズを踏まえた事業展開が重要となっています。
当社の加工食品事業は、冷食・常温事業および調味料事業を展開し、利便性とおいしさを両立した商品を提供してきました。お客様が食事を通じて、当社が提供する商品やサービスの価値を実感していただくことにより、加工食品事業のPurpose「食事をうれしく、食卓をたのしく。」を実現していきます。
SWOT分析
冷食・常温事業
冷食・常温事業は、テーブルマーク株式会社(以下、テーブルマーク)およびケイエス冷凍食品株式会社(以下、ケイエス冷凍食品)を中心として展開しています。
テーブルマーク株式会社
テーブルマークは、家庭用冷凍食品、家庭用常温食品、業務用冷凍食品を展開し、日常の食卓から外食まで、幅広い食のシーンを支えています。
家庭用冷凍食品では、国内シェアNo.1*2の冷凍うどん、冷凍お好み焼、冷凍たこ焼を中心にお客様から高い支持をいただき、冷凍麺は世界売上No.1*1としてギネス世界記録TMに認定されています。
家庭用常温食品では、良質な原材料と優れた加工技術で独自のおいしさを追求したパックごはんを展開しています。
業務用冷凍食品では、飲食店、ホテル、福祉施設や学校給食など幅広い業態に向けて、調理工程を工夫した商品や専門性の高い商品を提供し、多様化するお客様のニーズに対応しています。
これらの商品は品質を第一に、うどんにおける真空ミキシング、パックごはんの二段階加熱製法など、長年に亘り培ってきた高い食品加工技術をもとに製造しています。また、研究開発においては、食品総合研究所を拠点に、基礎科学から応用分野まで、加工技術と発酵技術の研究を中心として、商品価値の継続的な向上に取り組んでいます。商品開発においては、おいしさ、簡便性、健康への配慮、価格といったお客様の多様なニーズにお応えしています。
ケイエス冷凍食品株式会社
ケイエス冷凍食品は、冷凍肉団子・ミートボール分野で国内シェアNo.1*であり、独自の技術で製造した冷凍肉団子や鶏つくねなどを家庭用と業務用向けに展開しています。
近年では、植物由来原料のみで製造したプラントベースのミートボール「ソイリーボール」を業務用向けに展開しています。ベジタリアン対応やたんぱく源メニューとして、外食産業等の業務用を中心に活用が進んでおり、食の多様化や制約への対応を進めています。
調味料事業
調味料事業は、富士食品工業株式会社(以下、富士食品工業)で展開しています。さまざまな組立調味料と主力の酵母エキス素材など、独自技術を活用した製品を外食産業、加工食品メーカー向けに販売し、海外では米国、タイ、中国、インドネシアの4拠点で事業展開しています。
富士食品工業株式会社
富士食品工業は、2028年に70周年を迎え、食のパイオニアとして幅広い分野の味づくりを支えています。
外食産業向けには、ラーメンスープの素や香味油などを中心に、厨房での手間と時間を要する工程の効率化につながる製品を安定した品質で量産化することで、本格的な味をより簡便にお届けしています。また、再現性のある品質と顧客の用途や要望に応じた設計力を強みとし、多様な味づくりのニーズに対応しています。
加工食品メーカー向けには、酵母エキスを中核とした加工原料調味料をお届けしています。独自の酵素分解・抽出技術により引き出したおいしさを、和洋中の幅広い商品に展開するとともに、発酵技術を基盤とした酵母関連素材の研究開発にも取り組んでいます。
海外では、北米およびASEAN各国を中心に製品を展開するとともに、タイおよびインドネシアにハラール対応の製造拠点を持ち、日本や各国の味をハラール調味料で再現しています。
事業戦略
事業パフォーマンス
売上収益は、コロナ禍による需要構造の変化の影響を受けながらも、冷食・常温事業および調味料事業の主力製品を中心に堅調に推移しています。調整後営業利益は、原材料費等の事業コストが大幅に上昇する中においても、価格改定の実施に加え、製品構成の改善や最適生産体制の構築を通じたコスト低減等に取り組むことにより、着実な成長を実現しています。
2025年度は、冷食・常温事業における価格改定効果を主因として、売上収益は前年度比23億円増の1,595億円となりました。調整後営業利益についても、原材料費の高騰を受けながらも、増収効果等により、前年度比5億円増の86億円となりました。
売上収益・調整後営業利益(億円)
冷食・常温事業の2025年主な取り組み
主力の冷凍麺、パックごはん、お好み焼は引き続き国内市場で高いシェアを維持しています。また、変化するお客様のニーズに合わせ、家庭用新商品36品、リニューアル品52品を発売しました。
調味料事業の2025年主な取り組み
主力商品群である外食産業向けラーメンスープの素や香味油、加工食品メーカー向けエキス商品(酵母エキス、畜肉エキス等)の販売に注力するとともに、さらなる成長に向けて海外輸出の拡大や新商品発売等により、幅広い地域と分野での味づくりに取り組んでいます。
事業戦略の考え方
加工食品事業はJTグループの利益成長を補完する役割を担い、国内の利益成長と海外展開の加速に取り組んでおり、次の事項を基本戦略に据えています。
高い市場シェアを有する主力商品の価値向上による、国内収益基盤の強化と利益成長
事業機会が増大する海外市場において、国内で培った味づくりの技術を基盤とした展開の加速
研究開発などの事業活動を通じて将来の食の課題に対応
加工食品事業においては、原材料費、為替変動等の厳しい環境が継続するものと考えています。そのような事業環境の中でも、国内外での事業量の拡大や価格改定等を通じて、着実な利益成長を実現していきます。また、海外事業については、事業基盤を強化し、加工食品事業全体の海外売上高を高めていきます。
中長期の成長を支える取り組み
加工食品事業では、事業Purposeである「食事をうれしく、食卓をたのしく。」の実現を目指し、サステナビリティ経営の根幹となる5つの重要課題である「JT Group Materiality」に基づいた取り組みを推進しています。
中長期視点での価値創造
お客様に新たな価値を継続的に提供することを、中長期における事業成長に向けた重要課題と位置付け、商品開発および研究開発に取り組んでいます。
新たな商品価値の創造
食の多様化を重要なテーマとし、さまざまな食習慣を持つお客様へ商品を提供することを目指しています。その取り組みとして、富士食品工業のタイ、インドネシアの工場、テーブルマークの一部製造ラインでハラール認証を取得し、ハラールに対応した商品提供をしています。また、テーブルマークでは、プラントベースを主原料とした商品ブランド「BEYOND FREE」において2025年より業務用商品の展開を開始し、訪日観光客を想定したヴィーガン認証取得商品などを提供しています。これらの取り組みを通じ、海外のお客様にも商品価値をお届けすることで、中長期的な事業量の拡大を目指していきます。
食品総合研究所を中核とした研究開発
多様な価値の創造を支えているのが、加工食品事業全体の研究開発を所管する食品総合研究所です。当研究所は、中長期的な視点で技術領域を拡張することを目的に、テーブルマークと富士食品工業の研究開発機能を統合し、2022年に設立しました。既存商品の価値向上に加え、原料の枯渇など将来の食の課題に向けた研究テーマを設定し、未来を見据えた研究開発を行っています。
食の安全
加工食品事業では、安全で高品質な商品を継続してお届けすることを、事業運営の前提としています。お客様からの信頼は、安全で安心な商品を提供し続けることで築かれるものと考えています。
こうした考えのもと、フードセーフティ、フードディフェンス、フードクオリティ、フードコミュニケーションの4つの視点に基づき、安全管理を行っています。これらの取り組みは、商品開発から原材料調達、製造、出荷に至るまで、バリューチェーン全体で推進しています。また、国際的な食品安全基準や各国の規制に対応した品質保証体制の整備、運用にも取り組み、海外での中長期的な事業拡大を支える基盤を整備しています。
Food Safety
Food Defense
Food Quality
Food Communication
持続可能な環境や社会の実現
加工食品事業では、自然や社会が持続可能であってはじめて、人の暮らしや企業の活動も持続可能となると考えています。商品開発、原材料調達、製造、物流、販売まで、バリューチェーン全体を通じて事業活動がもたらす環境や社会への影響に配慮した取り組みを進めています。
環境負荷軽減、持続可能なサプライチェーンの構築
環境負荷軽減に向けては、省エネルギー活動や再生可能エネルギー由来電力などの導入を通じて、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を進めています。加えて、包材の薄肉化や仕様見直しによるプラスチック削減など、製品を通じた環境負荷低減にも継続的に取り組んでいます。また、持続可能なサプライチェーンの構築に向けて、サプライヤーとの対話やアンケートを通じ、環境や人権への配慮を含めた状況の把握に努めています。
食を通じた地域社会との共生
加工食品事業ならではの特性を活かし、地域社会との連携を通じた取り組みとして、食育機会の提供、災害時の物資支援に取り組んでいます。
2025年の食育活動の一例として、テーブルマークでは食品開発センターが所在する大田区の出雲小学校において、「元気が出る災害時の食」をテーマに体験型の連携授業を実施しました。大田区独自の教科「おおたの未来づくり」の授業パートナーとして実施したもので、児童自身が食の大切さやローリングストックの考え方について学ぶとともに、災害時に人を元気にするメニューを考案しました。これにより、災害時の食の重要性や日常の備えについて考える機会を提供しました。
今後も地域社会とのつながりを大切にし、青少年育成や非常時の支援などの取り組みを続けてまいります。