JT Group Purpose実現の原動力となるJTグループの人的資本
JTグループが掲げるPurpose「心の豊かさを、もっと。」は、当社グループが社会に対して果たすべき役割と価値創造の方向性を示すとともに、中長期戦略やサステナビリティ戦略を含むあらゆる経営判断・事業活動の拠り所となるものです。Purposeの実現は、社会の持続可能性と当社グループの中長期的な企業価値向上に直結するものであり、その達成に向けた活動の起点となるのは、価値創造を担う従業員一人ひとりです。私自身、人的資本を担う立場として、Purposeの実現と企業価値向上を支える基盤は、その一人ひとりの力にあると考えています。
自ら変革を起こし、新たなステージに踏み出す多様な人財
私たちは、健全な危機感をこれまでも全従業員で共有してきました。それは「現状にとどまることは後退を意味し、前進を続けなければ社会からの期待や信頼に答え続けることはできない」という認識に基づくものです。その背景には、専売公社という生い立ちのもと、必ずしも純粋な競争環境に身を置いてこなかったという、JTグループとしての自己認識があります。加えて、中長期的な環境予測が比較的容易であったという、たばこ事業の特性も相まって、私たちは長期的な視点に立ったさまざまなチャレンジを重ねてきました。民営化を起点に事業会社としての自立を果たし、たばこ事業を基盤に多角化を進めるとともに、事業環境の変化を踏まえた選択と集中を通じて、事業ポートフォリオを段階的に進化させてきました。とりわけ、M&Aを通じた海外たばこ事業の拡大は、当社グループの事業領域を地理的に拡大すると同時に、グローバルでの競争を前提とした経営の在り方へと進化させる契機となりました。これらのチャレンジはその時々の経営が意思決定してきたものですが、その方針に共感し、実行し、自らの行動変容につなげてきたのは従業員一人ひとりです。このように当社グループを前進させ続けた結果、現在では、国籍という一つの側面を取ってみても100を超える国籍の多様な仲間がPurposeのもとに集っています。
私たちは当社グループの人財マネジメントポリシーの中で「人財の多様性こそが競争力の源泉である」と掲げています。事業を取り巻く環境の不確実性が増し続ける中においても、従業員一人ひとりがその個性や能力を最大限に発揮し、互いに触発しながら多くのチャレンジに挑み、それを乗り越えていく環境を維持・進化させていくことで、今後も社会・株主・お客様へ持続的な価値提供を果たしていけると考えています。
私たちが考える人的資本
私たちは人的資本を「人財」 「組織風土」 「オーナーシップ」の3つの要素から捉えています。
「人財」とは、Purposeの実現に向けたあらゆる活動の起点であり、企業活動を推進し、価値創造を担う存在です。従業員一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮し、多様なカルチャーやバックグラウンド、価値観を持つ人財が協働することによって、JTグループの持続的な成長を支えています。
「組織風土」とは、組織として共有すべき価値観であり、判断基準や行動様式として組織に根付いたものです。私たちは高い倫理観に基づく誠実さ、お互いの成長を支援し合う姿勢、そして多様な人財を包摂し活かしていく組織風土を、長年に亘り大切に育んできました。価値観の多様化が進む時代においても、こうした共通の価値観が判断基準として機能することで、JTグループならではの価値を持続的に創造していけると考えています。
そして、「オーナーシップ」とは、Purposeへの理解と共感を起点に、当社グループの価値観を自らの判断や行動に落とし込み、主体的に実践していく姿勢です。従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮しながら、組織で共有された価値観が判断基準や行動様式として組織全体に浸透していく好循環が重要であり、オーナーシップはその好循環を生み出す原動力になると考えています。
個の力を最大化させゆく人財マネジメント
私たちは、人的資本の拡充を目指して、これまでも人財マネジメントを進化させ続けてきました。
例えば、2006年には、「社員と会社は、『仕事』を通じて貢献/処遇し、ともに『成長』する」を基本コンセプトとして、職務給制度の導入、専門性やスキルに応じた職群設定、自律的なキャリア形成を支援する各種制度等の大幅な改定を実施しました。その後、2022年からは、事業フェーズや競争環境の異なる事業ならびに職務の特性を踏まえて、それぞれの職務遂行を最大限後押しできるように、異なる制度のパッケージを同一社内に併存させる「マルチパッケージ」という思想のもと、人財マネジメントに大きな変更を加えました。新規事業領域を担当するD-LABでは、既存の制度とはまったく異なる資格等級体系やそれに紐付く報酬制度、目標管理・評価制度を導入しました。また、たばこ事業のグローバルなマネジメント体制統合を契機にグループが保有する人的資源の最大活用を目指し、人事諸制度のグローバルな共通化も進めてきました。足元では、人生100年時代を踏まえたキャリア形成の在り方を実現するため、各種制度の見直しを進めており、その大部分を2027年度から導入する予定です。
絶え間ない進化を目指して
これらは私たちが行ってきた人財マネジメントにおけるチャレンジの一部にすぎませんが、従業員一人ひとり、またその集合体である組織の風土や企業文化への影響を与える制度を見直す際は、検討の段階から経営トップも参画し、徹底した議論を重ねています。人財が企業活動を行ううえで欠かせない存在である"People come first"という考えは、私たちグループに深く根付いたDNAだと考えています。
今後も社会・株主・お客様の想像・期待を上回る価値提供を実現し続け、Purposeを体現するグループとしてご支持を得られるよう、人財マネジメントを不断に進化させてまいります。
人的資本の拡充に向けた取り組み
6つの注力テーマ
JTグループでは、人的資本の拡充に向け、社内外における多様な人財を惹きつけるとともに、いきいきと働ける組織づくり、さらには一人ひとりの成長と強みや能力の発揮を後押ししていく観点から、6つの注力テーマを設定しています。また、各注力テーマにおける取り組みの進捗や施策効果を把握するための指標を設け、継続的なモニタリングを通じた施策の検証・改善を実施しています。企業価値のさらなる向上を目指し、人的資本拡充に向けた取り組みを進めていきます。
注力テーマ1:DE&Iの推進
多様な人財が継続的に活躍できる環境づくりを行うことが、持続的成長につながると考えています。私たちは、従業員一人ひとりの属性やバックグラウンドといったさまざまな違いを「競争力の源泉」となる「価値」と捉え、人財の多様性を大切にしています。そして、多様な人財が、属性や価値観の違いにかかわらず公正に扱われ、継続的に活躍できる環境づくりに取り組んでいます。
多様な人財の確保と活躍推進
- さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ人財を採用し、従業員には互いの多様性を理解するための各種研修やイベント等の啓発活動を実施しています。
- 誰もが活躍できる職場環境の実現を目指し、国内では障がい者雇用の推進に向けた環境の整備や、外国籍人財が活躍できる多言語対応等を実施しています。
- LGBTQ+支援の各種取り組みの結果、2025年に10年連続でPRIDE指標の最高評価となるゴールド取得、および初のレインボー認定を獲得しました。
ジェンダーエクイティ 〜女性の活躍推進〜
- グループ目標「2030年までに女性マネジメント比率30%」を掲げ、2025年からは女性マネジメント比率を役員報酬の指標(KPI)として導入しています。2025年の女性マネジメント比率は26.4%(前年度比+1.5%)となり、着実に進展しています。
(%)
| 項目 | 男性 | 女性 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|
| 在籍割合 | 30歳未満 | 10.1 | 5.6 | 15.7 |
| 30〜49歳 | 48.9 | 17.5 | 66.4 | |
| 50歳以上 | 13.6 | 4.3 | 17.9 | |
| マネジメント比率 | 73.6 | 26.4 | 100 | |
| 男女間賃金格差* | マネジメント | 100 | 99.1 | - |
| その他社員 | 100 | 111.9 | - | |
* 国別・企業別に男性を100%とした場合の女性の賃金割合を算出し、人数に応じて加重平均した数字
注力テーマ2:人財の戦略的な確保
グローバルで複数の事業を展開している当社グループが持続的に成長するためには、それぞれの地域・事業に必要な人財が確保できている必要があります。私たちが、多様な人財から選ばれる魅力的な企業であり続けるために、各地域・事業ごとの魅力的な報酬水準設定や、事業特性を踏まえた採用により、優秀人財の確保に取り組んでいます。また、グループの将来を担う経営人財や各事業をリードする人財、事業を拡大・最適化する人財、社会に対する新たな価値領域を探求するための人財の獲得・成長支援に取り組んでいます。
多様なアプローチによる優秀人財の確保
- 地域・事業ごとにベンチマークを設定し、魅力的で競争力のある報酬水準を設定しています。
- JT International(以下、「JTI」)は、12年連続でGlobal Top Employerに認定されており、優良なグローバル企業としてのブランドを確立するとともに、各国・地域に即した採用活動も併せて行うことで、優秀な人財のアトラクションに努めています。
経営・事業をリードする人財パイプラインの形成
- 経営・事業をリードする人財を中長期的に確保するため、選抜型の早期育成制度を充実させ、各階層における経営者候補のタレントプール形成に取り組んでいます。
- 約500名が経営・事業をリードする人財候補として育成プログラムに参加しています。また、約200名については、経営陣および事業リーダーが育成責任を持って関与し、その状況をモニタリングするだけでなく、客観的な外部評価や市場における競争力といった視点も取り入れながら、候補者一人ひとりの資質や中長期的な成長課題、キャリアプランについて継続的かつ多面的に議論しています。
新たな価値領域を探求する人財の確保
- コーポレートR&D組織であるD-LABでは、新しい形での「心の豊かさ」提供に向けた活動を行っており、活動特性に応じた人事制度を導入することにより、新規開発事業を支える人財の獲得・成長に努めています。
注力テーマ3:働きやすい環境の整備
従業員一人ひとりがその能力を最大限発揮し、組織パフォーマンスにつなげることができるための労働環境を整備することが重要と考えています。勤務場所・時間等の制約・働き方の志向性にかかわらず、従業員が自らに合った働き方を自律的に選択できる制度を整備するとともに、多様な人財の強みや能力が発揮されるよう、心理的安全性の高い職場づくりに取り組んでいます。
多様な働き方
- コアタイムなしフレックスタイムやリモートワークの仕組みを導入し、柔軟な働き方(フレックス等)と、働く場所(出社やリモートワーク)のベストミックスによる従業員一人ひとりの能力発揮を通じた組織パフォーマンスの向上に取り組んでいます。
- JTおよびJTIでは、「Global Family Leave Policy」により、ジェンダーや性的指向にかかわらず、すべての従業員が父母になる際に最大20週間の有休相当の休暇を提供しています。
- JTでは、性差に基づく健康課題(「月経随伴症状」「更年期障害」「妊孕性の低下」「性別特有のがん」)への新たな支援策としてWellness Advanceを導入し、卵子凍結費用補助等新たな支援を拡充しています。
- 2025年のグループ全体における育休等の取得率は102%(前年度比+4%)と向上、男性の取得率は102%(前年度比+6%)と着実に伸長しています。
- 国内グループの目標として「2030年までに男性育休等取得率100%」を掲げています。
(%)
| 項目 | 男性 | 女性 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 育児休業等取得率* | 102 | 101 | 102 |
* 当該事業年度に本人またはパートナーが出産した従業員数に対する、各国法令に基づく育児休業等または各企業が独自に定める育児目的休暇等の取得者数の割合を算出(前事業年度以前の出生に対して育児休業等を取得した場合は、当事業年度の取得率が100%を超えることがあります)。
心理的安全性の高い職場づくり
- グループ全体での従業員エンゲージメントサーベイを毎年実施しています。2025年度のエンゲージメントサーベイについて、回答率は94%(前年同水準)、従業員満足度は79(前年度比+1)となり、ともに向上しています。
- 組織の状態を把握し、改善につなげることを目的とした、地域や部門単位でのパルスサーベイも適宜実施できる体制を整備し、すべての従業員が安心して強みや能力を発揮できる組織・職場づくりに取り組んでいます。
注力テーマ4:心身の安全・健康の推進
誰もが心身ともに健康で安全にいきいきと働くことができる職場環境の整備によって、従業員一人ひとりが持てる能力を最大限発揮するための基盤を形成し、安定的かつ信頼性の高い事業運営を実現できると考えています。そのため、JTグループ労働安全衛生ポリシーで掲げる労働災害ゼロを目指し、安全意識の向上等を目的とした各種施策を実施しています。さらに、従業員の健康の維持・増進に向けたさまざまな健康支援施策にも注力しています。
JTグループの労働安全衛生ポリシー
- さらなる従業員の安全の確保と健康の維持・増進のために、取締役会の承認を経て、JTグループ労働安全衛生ポリシーを制定しています。また、社長の責任のもと、労働安全衛生に関する取り組みを行い、取締役会が監督する体制を構築することで、グループガバナンスの強化を図っています。
労働災害防止に向けた取り組み
- 労働災害ゼロに向け、業務特性に応じた未然防止が重要という認識のもと、リスクアセスメントにより、車両運転業務および機械操作業務における労働災害の発生リスクが高いと判断しています。
- これを踏まえ、運転者の行動を個々人で分析しアドバイスを提供するアプリの海外での導入、たばこ工場におけるISO45001の認証取得のグローバルベースでの推進等を行っています。
- また、安全性の継続的な維持・改善の土台となる安全意識や知識の向上を目的とした安全衛生教育を各社・各事業所にて実施しています。
心身の健康の維持・増進に向けた取り組み
- JTでは、社長主導のもと健康経営を推進しており、全国に配置した専門職による個別の健康面談やセルフケア・ラインケアといった各種セミナーの実施等、従業員一人ひとりが心身ともに健康で持てる力を最大限に発揮できるよう取り組みを行っています。
- また、海外では職業性疾病に関連したデータの一元管理によるリスクの把握および一貫した対策を展開するとともに、社内で初期対応ができる相談員であるMental Health First Aidersの育成等、さまざまな取り組みをグローバルベースで進めています。
注力テーマ5:自律的な成長の支援
従業員一人ひとりが、JTグループでの活動を通して、自らが志向するキャリアを実現することが、人的資本の拡充に向けて重要と考えています。そのため、従業員が自律して自らのキャリアについて考える、選択する、個々のキャリアプラン実現に向けて行動することを積極的に支援しています。
自律的なキャリア形成を促すための仕組み
- 毎年、自らのキャリアプランや異動希望・制約等を話し合うキャリア面談に加え、従業員自らが所属部門を越えて、多様なキャリアを選択し、切り開く機会も提供しています。
- JTでは、年1回、希望する組織への異動に自ら応募できるキャリアチャレンジ制度を導入しており、キャリア座談会や社内インターンシップにも取り組んでいます。
- たばこ事業では、オープンポジションをグローバルに公開し、従業員が自ら応募できるJob Posting制度を導入しています。2025年には年間で4,569ポジションを従業員へ公開し、延べ8,146名が応募しました。
多様なニーズに対応した学習機会の提供
- 従業員一人ひとりの成長ステージに合わせ、強みや課題を把握しながら、職場経験(OJT)、階層別研修、選択型研修(OFF-JT)、アセスメント等を効果的に活用する独自の体系的なラーニングプログラムを導入しています。
成長を後押しするフィードバック文化の醸成
- 対話の機会を創出するための、従業員の強みと課題をフィードバックするための評価面談、継続的な対話を促すための1on1等の仕組みを整備しています。
- 毎年グループ全従業員に対し、成果に対するフィードバックや改善につながるアドバイスを伝える面談を実施しています。
注力テーマ6:社内外との共創の促進
JTグループ内での地域・部門間や、従業員同士の共創を促すために、共創を誘発する場づくりに取り組んでいます。また、他社やコミュニティ団体との共創にも積極的に取り組むことで、グループの枠を越えたさまざまな視点や知見を結集し、これまでにない新たな心の豊かさを生み出すための活動を促進しています。
社内共創の推進
- グループ共通のデジタルツールであるWorkvivoを活用し、地域・事業・部門を越えたさまざまなコミュニティづくりを通じた相互理解やナレッジ共有を推奨しています。
- リモートワークが浸透していく中において、オフィスは共創を推進する場としての重要性がより高まっていると考えています。例えば、当社グループ本社オフィスにおいて、地域・事業や部門を越えたプロジェクトでの活用や、組織の枠を超えた従業員間の交流を促すイベントを定期的に企画・開催し、新たな発想や協働のきっかけづくりをしています。
社外との共創の促進
- 従業員が社会の一員として社外と関わり、社会課題や地域課題に主体的に向き合う機会を重視しています。企業や大学・研究機関、コミュニティ団体等、多様な社外関係者との関わりを通じて、社内では得られない気づきや知見に触れる機会を広げています。
- その一環として、ボランティア活動時間への参画機会や各種制度も整備・提供しています。2015年より従業員が勤務時間内に従事したボランティア活動時間は296,595時間に達しました。