特集
変化を力に
常に進化し続ける
JTグループ
JTグループは、「心の豊かさ」という価値を起点に、変化を機会として自らを進化させてきました。本特集では、その歩みと、JT Group Purpose実現に向けた足元から未来への取り組みを紹介します。
変化を成長の機会と捉え、自らを変革する企業
JTグループは、外部環境の大きな変化に真摯に向き合い、それらを成長の機会として変革を積み重ねてきました。ときには挑戦が期待どおりの成果に結びつかないこともありましたが、何が不足していたのかを直視し、学びへ変え、次の行動につなげてきました。成果も課題も受け止め、最後までやりきり、着実に前に進む、この誠実な姿勢こそが、当社グループの歩みを支えてきました。
社会が急速に変化する今、「当社グループが未来の社会においてどのような存在でありたいか、どのように社会に貢献していきたいか」を、改めて問い直しました。その際、サイエンス・テクノロジーの進展によって生活がますます最適化されていく一方で、人はその反動として、不便や非効率の中にこそ意味や味わいを見いだすようになる――そんな価値観の揺り戻しが起こるのではないかとの仮説に至りました。一見非合理に見える日常のひとコマにこそ、「心の豊かさ」に気づく瞬間があります。その積み重ねが社会全体、さらには未来の人々の「心の豊かさ」を形づくっていくと考えています。こうした未来の変化を考え、当社グループが長年大切にし、これからも提供していきたい価値を改めて言語化したものが JT Group Purpose ―「心の豊かさを、もっと。」です。
一方で、その価値の届け方は、社会や人々の価値観が移り変わるなかで、柔軟に進化させていく必要があります。当社グループが進化を続けるのは、単なる事業拡大や競争優位性の確立にとどまらず、「心の豊かさ」の領域において社会から信頼され、任される存在であり続けるためです。
変革と挑戦の背景
JTグループは短期的な成果の追求だけでなく、未来の成長を見据え、自らを変革し続けてきました。事業を取り巻く環境や市場構造の変化が顕在化する中、試行錯誤を重ねながら変革を実行してきた歩みは、現在の当社グループの成長基盤そのものになっています。
健全な危機感と成長への想い
日本たばこ産業株式会社となる以前の日本専売公社の時代から、国内たばこ市場では、成人人口の減少や喫煙と健康をめぐる社会的関心の高まりを背景に、総需要停滞の兆しが現れ始めました。長期的に総需要減少が続く可能性も意識されるなか、当社(当時の日本専売公社)は「このままでは持続的な成長は見込めないのではないか」という健全な危機感を持っていました。同時に、「たばこ事業は人の心に豊かなよろこびを提供し得るユニークな産業であり、この価値を将来に亘り維持し、時代の要請に応えながら発展させていきたい」という想いがありました。危機感を単なる不安で終わらせず、「想いを実現していくために何に挑むべきか」という問いに真剣に向き合い続けた結果、グローバルなたばこ会社になるという将来像を描き出しました。積極的な海外進出を行い、世界で競争していくためには経営判断や投資を自らの責任で行える企業に進化することが不可欠でした。1985年に日本たばこ産業株式会社として再出発(会社化)したことで、グローバル化という大きな挑戦に踏み出すための枠組みが実現されました。
国内たばこ販売数量*の推移(億本)
* JT推計
グローバル化への挑戦
1980年代後半には、自社で製造した製品を海外市場へ輸出し、徐々に販路を拡大する輸出モデルにより海外展開を進め、海外での知見の蓄積や販売基盤の構築にも取り組みました。一方で、海外市場では国・地域ごとに規制環境や商習慣、競争構造が異なる難しさや、世界の多様なマーケットに展開するための人財不足にも直面しました。国内と同じやり方では十分にブランドを育てられないという現実を認識しながらも、グローバル企業に進化する歩みを止めず、生活者の嗜好や文化背景に寄り添ったコミュニケーションや製品開発のアプローチ、販売基盤の構築、現地オペレーションの確立までを含めた一連の取り組みを強化していきました。
そして、グローバルでの成長基盤を飛躍的に拡大させる契機となったのが、1999年と2007年に実施した大型買収です。これらの買収により獲得したブランドは、その後の継続的な投資によるブランドエクイティの強化を通じ、現在、当社グループの成長を牽引するGFB(Global Flagship Brands)へと大きく成長し、特にWinstonとCamelはグローバルで第2位・第3位のCombustiblesブランドとしての地位をさらに確固たるものとしています。またグループ従業員数も買収前と比較すると約2.5倍に拡大し、100カ国以上の国籍で構成される多様なバックグラウンドを持つ人財が当社の競争力の大きな源泉となっています。
これらの買収は、その後のグローバルマネジメントの構築、そして高度化に向けた挑戦の歴史の始まりでもあります。買収後の統合プロセス、その後の事業運営は決してスムーズに進んだことばかりではなく、多くの課題にも直面してきましたが、それらの経験が、適切な権限委譲のもとで自律的な事業運営を可能とするグローバル経営体制へとつながっていきました。
たばこ販売数量
持続的成長に向けた国内事業基盤の強化
海外事業で大きな成長基盤を獲得した一方、国内市場では人口減少や規制強化により総需要の減少が続いていました。将来に亘って価値を生み続け、成長し続ける企業であるためには、国内の事業基盤を抜本的に見直す必要がありました。2003年度~2005年度の中期経営計画「JT PLAN-V」では、2002年まで3年連続最高益でありながら、将来の成長のためにたばこ製造工場の統廃合(25工場から10工場体制へ)や営業拠点再編、葉たばこ農家の廃作募集等を実行しました。さらに、2015年・2022年にも国内事業基盤を強化する施策を実施しています。これらの痛みを伴う改革は、単なるコスト削減ではなく、より強固な事業基盤の確立、競争力や収益力のさらなる強化、それらを通じたJTグループの中長期に亘る成長のために不可欠なものでした。そして、産業構造が大きく変化する中でも、将来を見据え、「One Team」に挑戦しています。
さらなる進化に向けた挑戦 ― One Team ―
足元のRRP(Reduced-Risk Products)の台頭に見られるように、たばこ産業においては、これまでの延長線上では対応できない非連続の変化が進んでいます。こうした環境下でグローバルに競争力を発揮し成長し続けるためには、グローバルリソースを最大限に活用し、お客様のニーズや期待を超える商品・サービスをより効果的且つ効率的に提供できる体制を構築することが重要だと考え、2022年に当社は国内と海外のたばこ事業の2事業体制を一本化するOne Teamへと踏み切りました。
たばこ事業の本社機能をJT International(JTI)に置いて、レポートラインをグローバルで統一するだけでなく、国内と海外で分かれていた戦略策定、意思決定プロセスの機能や仕組みの統合、システムの一本化等、今までの仕事の前提を大きく変え、人財や経営リソースをグローバルに最大化する体制としています。
例えば、130以上の国と地域にグローバル展開する基幹系システムと国内システムを一本化することは、前例にない巨大プロジェクトでした。それぞれに独自の業務プロセスや商慣習が存在する中、移行計画の策定から各拠点や100以上の部署との調整等、プロジェクトが完了するまでには5年以上に亘る時間を費やしました。また、2,000名以上がこのプロジェクトに参画し、社内浸透施策や実装後の安定化に取り組み、2024年1月にシステム統合を完了、グローバル統一のシステムのもとでのさらなる効率的な事業運営を実現しています。
One Teamは、組織・プロセス・システム等の統合を通じて、お客様への提供価値の最大化をグローバルベースで図るための取り組みです。組織の違いや物理的な距離、文化の違いを乗り越え、同じ目標に向かって取り組み続けることで、「これからもOne Teamとしてともに未来をつくる」というマインドセットも強化されています。
グローバルでの大型買収や国内事業構造改革、そしてOne Teamといった挑戦を積み重ねながら、当社グループはその成長の基盤を着実に強化してきました。将来を見据え、絶えず自己変革をしていくことが当社の中長期的な成長の原動力であると考えています。
1985年会社化から2025年現在の比較
*1985年の数値は当時の会計基準に基づく公表数値です。2025年の数値とは、会計基準の違い、連結範囲や事業内容等の変化により、必ずしも同一の基準で算定されたものではありません。数値は当社グループの規模感の変遷を示す参考情報としてご覧ください。なお、当社グループは、2025年度の第3四半期より医薬事業を非継続事業に分類しており、2025年の当期利益は継続事業ベースの数値を表示しています。
これからの成長に向けて
変化が続く事業環境のなかで、JTグループは中長期的な成長、そしてJT Group Purposeの実現に向けた取り組みを加速させています。利益成長の中核かつ牽引役であるたばこ事業に加え、利益成長を補完する加工食品事業、そして長期的な視点で社会に「心の豊かさ」を育むことへの貢献を目指すD-LABが、それぞれの役割を通じて成長の幅を広げています。
たばこ事業におけるRRPの進展
たばこ業界では、テクノロジーの進化や消費者の価値観の多様化等により、RRPを含めた多様な製品へのニーズが高まっています。RRP市場はまだ若い市場であり、イノベーションによる新しい価値に対する消費者の受容性が高いものと考えています。一方で、イノベーションは技術だけでは成立せず、お客様*の潜在的ニーズを捉え、その価値を伝えることが重要です。
JTグループは喫煙に伴う疾病のリスク低減の観点からRRPへのニーズが存在することを早くから認識し、日本において「エアーズ」「ゼロスタイル」といった無煙たばこを投入した過去がありますが、お客様の潜在的なニーズを捉えきれず、また商品の価値を最大限に伝えきることができませんでした。この反省から、当社は改めてコンシューマーセントリックの徹底を磨き続け、お客様の真のニーズに基づく製品開発やマーケティング体制を構築してきました。
今後最も成長するカテゴリと考えているHeated Productsについては日本での発売当初、周囲への影響や健康懸念がHeated Productsの選択理由の中心でしたが、市場が大きくなるにつれ、嗜好品としての味へのニーズが高まっていることをコンシューマーインサイトから把握しています。お客様の使用行動、味の好み、デバイス切り替え時の障壁等、細部の体験を丁寧に読み解き、デバイス/リフィルの設計・パッケージ・店頭体験・価格戦略まで一貫して反映する運用に進化させています。
*喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。
RRPの系譜
*1 日本向け製品 *2 日本国外向け製品 *3 グローバルモデル
その姿勢を体現したのが、Heated Products最大市場である日本において2025年5月末に発売したPloom AURAです。味の改良、デバイス設計の見直し、加熱方式の進化により、お客様から味・デザイン・機能性に関する高い評価を獲得しています。実績にも表れ始めており、日本における2025年度第4四半期のHeated Productsカテゴリシェアは15.7%に達しました。さらに、日本で得たコンシューマーインサイトや改善サイクルを、One Teamによって他マーケットにも共有しており、各マーケットでのHeated Products展開やPloomシェアの伸長加速に寄与しています。
引き続き、Combustiblesにおける収益性向上により、投資原資を生み出し、最重要カテゴリであるHeated Productsに対し経営資源を集中させ、経営計画2026期間中(2026年~2028年)にRRPへ約8,000億円の戦略的投資を行う予定です。特にマーケティング活動を強化することを通じ、Heated Productsを利益成長の第二の柱として確立するための基盤を固めていきます。さらに、将来的なRRPの成長ドライバーの探索・創出に向けて既存のセグメントの定義におさまらないNext Generation Propositionについても、事業機会の発掘やイノベーションの推進に取り組んでいきます。
日本におけるPloomのHeated Productsのシェア*
* Ploom販売数量 / Heated Products総需要
Ploomの市場展開数の推移
PloomのGlobal total SoS*は、2025年11月末時点で9.7%(+2.0ppt vs 2024年12月末)
* 2023年時点で展開を計画していた計13市場のデータを基に推計したカテゴリ内シェア
リスク低減製品の使用に伴う健康影響の考え方
喫煙に伴う疾病のリスクの主な要因は、たばこ葉を燃焼させることに伴って発生するたばこ煙中の健康懸念物質であると考えられています。したがって、たばこ葉の燃焼を伴わず煙を発生しない新しいスタイルのたばこ製品により、喫煙に伴う疾病のリスクを低減できる可能性があるものと、当社は考えます。こうした考え方に基づき、当社は、味・香り等の面でも満足いただけるリスク低減製品*1を開発し、新たな選択肢としてより多くの成人*2の喫煙者に提供していくとともに、それらについての適切な情報提供を行っていきます。また、当社はこれまで、リスク低減製品を科学的に評価するため、製品の成分分析から臨床研究、さらには公衆衛生上の影響までを考慮した評価方法の研究にも取り組んできました。引き続きそうした科学的研究を進めていくとともに、そこで得られたデータや知見等の成果について、広くお知らせしていきます。
※1:「リスク低減製品」とは、「喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品」を指します。
※2:喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。
Combustiblesを中心としたたばこ事業については、当面は堅調な成長が継続すると見立てています。一方で、超長期の観点では決して楽観視していません。規制、税制、人口の動向、価値観の変化や技術の進展等の不確実性を織り込み、RRPの拡大に加え、日常に寄り添う製品・サービスを提供する「心の豊かさ」と親和性が高い加工食品事業、そして長期的な視点で、まだ見ぬ「心の豊かさ」の研究・探索・創造を担うD-LABの取り組みを進めています。これらの取り組みを通じて、将来に亘り「心の豊かさ」の領域を担い、社会から任され続ける存在として成長することを目指しています。
加工食品事業 ― 日常の価値を創造し、提供価値を拡大
加工食品事業は、日常の幅広いシーンで価値を提供する事業です。おいしさ、安全安心に加え、調理簡便化による時間価値の創出といった、たばこ事業とは異なる価値提供を行い、JTグループの利益成長を補完する役割を担っています。冷凍うどんやパックごはん等の主力製品の提供価値を磨くと同時に、多様化するお客様の価値観や関心に寄り添い、ハラール対応商品や商品ブランドBEYOND FREE(ビヨンドフリー)といった高付加価値な商品の開発、提供に取り組んでいます。加えて、本格的な料理をより簡便で豊かにすることを目指し、業務用の組立調味料や、独自技術を活用した酵母エキスなどの製品を外食産業や加工食品メーカーにお届けしています。国内における競争環境の激化や原材料費等の事業コストの上昇は継続していますが、商品ラインナップのさらなる充実や最適な生産体制の構築を通じて着実な成長を目指します。
また、日本食への関心の高まり等の成長機会を背景に、国内で培った味づくりの技術をベースに海外展開を加速させ、事業量を拡大していきます。さらに、多様な価値の創造や将来の食の課題に対応するため、研究開発にも力をいれており、これらの取り組みを通じて当社グループ全体の持続的な成長に寄与していきます。
コーポレートR&D組織:D-LAB ―中長期の視点で「心の豊かさ」を探索
D-LABは、JTグループのまだ見ぬ「心の豊かさ」を長期視点で研究・探索・創造するコーポレートR&D組織です。たばこや加工食品事業のどの事業部にも紐づかず、「心の豊かさ」という価値を起点に活動していることが特徴です。組織には約100名が所属し、日本だけでなく、米国、シンガポール、欧州などグローバルに拠点を持ち、多様な人財で構成されています。
活動は大きく(1)「心の豊かさ」という価値の多角的研究、(2)未来の事業シーズ探索、(3)未来の事業シーズ創出の3領域となっており、大学や企業との共同研究により「心の豊かさ」の理解を深めつつ、技術探索や市場理解を通して将来の事業候補を発見する活動や、実際にグループ会社や関連会社で製品化・販売する取り組みにも踏み出しています。
また、外部協業・投資も積極的に行い、スタートアップ育成やグローバルベンチャーキャピタルとの連携を通じて新領域の開拓を進めています。社会がめまぐるしく変化するなかで、変化に適応しそして自ら変化を生み出す力を備え、多様な個の力を起点に長期的な視点で社会に「心の豊かさ」を育むことへ貢献するとともに、当社グループの利益成長に寄与することも目指しています。
JT Group Purpose実現に向けて
社会や事業環境がどれほど変化しようとも、JTグループが大切にしてきた価値の原点は変わりません。それは、製品やサービスを通じて、「心の豊かさ」を感じる瞬間に寄り添い、ともにその瞬間を創り上げることです。この想いは、当社が目指す最大の価値領域であり、これからの成長を導く軸でもあります。一方で、その価値の届け方は、時代とともに進化していきます。人々の価値観や生活様式が変わるなか、当社は、「心の豊かさ」の提供のあり方を磨き続けていきます。
JT Group Purpose「心の豊かさを、もっと。」は、短期的な成果を求めるものではなく、超長期の視点で目指し続ける指針です。JT Group Purposeの実現、そして心豊かな社会・未来に貢献するため、変化を機会として捉え、弛まぬ進化に挑戦し続けていきます。