東京農業大学教授 宮林茂幸さん

インタビュー

森林再生の重要性(全4回)

東京農業大学教授 宮林茂幸さん

都心にいても車で1時間も行けば、
緑の森や山を目にすることができます。
日本に森はたくさんあるのに、
どうして守らなくてはならないのだろう?
本の森林の現状や課題、森林の働きなどについて、
東京農業大学 地域環境科学部長の宮林茂幸教授に
さまざまな視点からお話をうかがいました。
4回シリーズでお届けします。

  • 第1回
  • 第2回
  • 第3回
  • 第4回

「森の国」日本の森が危ない

木を使わなくなったことが招いた“緑の砂漠”

日本には国土の68%もの森林があり、フィンランドなど北欧諸国と比較しても極めて高く、世界でも有数の森林保有率を誇っています。ところが一見、緑で美しく見える日本の森林も、実は人の手が入らず荒廃しています。こうなった主な要因は、意外かもしれませんが木を使わなくなったことにあるのです。

木材価格の推移

経済構造の変化でエネルギーは薪や炭から石油に代わり、山の使い方は木材生産中心になりました。そこでよい木材を育てるため、スギやヒノキをたくさん植えたのです。しかし鉄筋コンクリートなど木材に代わる製品、さらには安い輸入材の多様な需要拡大で価格が大きく下落してしまいました。国産材の価格は落ち込みが激しく、スギなどは30年前と比べて約10分の1です。

その結果、木が売れなくなったことで手入れができなくなり、次第に森林は放置されて荒廃。根が張らず土を保ち・掴めない木々は、風が吹けば倒れ、腐葉土が乏しくスポンジのように水を吸い込まなくなった土壌は、雨が降れば土砂が流出する“緑の砂漠”に変わり始めたのです。

森林の荒廃が与える影響

健全な森林の回復は、生態系や気象にも重要な意味を持ってきます。森林が荒れると山に食べ物がなくなり、野生動物たちが里で農作物を荒らすことになります。また、森林にはCO2を吸収して木材に固定する働きがありますから、森林の崩壊が進めば地球温暖化も加速します。地球の温暖化は、日本に降り積もる雪の量を大きく減らします。

実は日本の水源の多くは雪解け水を蓄えて利用しています。山間部の積雪は少しずつ雪解けし、森林がその水を蓄えて浄化しながら徐々に河川へ流すという巧みな水循環調整機能を持っています。その機能が低下すれば渇水などが多発することになります。

このように、健全な森には多様で重要な働きがあるのです。森が荒れれば、下流域にも影響が出ます。他人事ではなく、森という財産をみんなで守る意識を持つことが大切だと思います。森林は私たちの共通の財産といえます。

宮林茂幸さん

宮林茂幸さん プロフィール

宮林 茂幸(みやばやし しげゆき)
東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科森林政策学研究室教授(農学博士)日本森林学会会員、林業経済学会評議員、日本緑化センター理事、美しい森林づくり全国推進会議事務局長などを務める。
1953年(昭和28年)長野県生まれ。
宮林茂幸さん インタビューINDEX
第1回「森の国」日本の森が危ない
第2回“緑の砂漠”を生き返らせたい
第3回 森林がもたらす人・環境への影響
最終回 これからの森林保全への提言

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