東京農業大学教授 宮林茂幸さん

インタビュー

森林再生の重要性(全4回)

東京農業大学教授 宮林茂幸さん

都心にいても車で1時間も行けば、
緑の森や山を目にすることができます。
日本に森はたくさんあるのに、
どうして守らなくてはならないのだろう?
本の森林の現状や課題、森林の働きなどについて、
東京農業大学 地域環境科学部長の宮林茂幸教授に
さまざまな視点からお話をうかがいました。
4回シリーズでお届けします。

  • 第1回
  • 第2回
  • 第3回
  • 第4回

“緑の砂漠”を生き返らせたい

国産材の良さを見直そう

荒廃した森林を再生させるために重要なのは何だと思いますか? 意外に思うかもしれませんが、日本の場合、木を切らないことで人工林が荒れているわけですから、国産材をもっと使うことなのです。国産材は高いと思っている人が多いかもしれませんが、スギなどは30年前と比べて約10分の1です。経済が成長している中、こんなに価格が下がった物品は他にないでしょう。

さらに国産の材は耐久性もあります。地元の木材を使うと、気候風土にあっているから耐久性があると大工さんがよく言います。水周りなど、外材だと5年ぐらいしかもたないものもあり、国産のサワラやヒバを使うと20〜25年ぐらいもつ。外材に比べてシロアリに食われにくいところも国産材の特徴ですから、長い目で見れば決して高い買い物ではないはずです。

また、環境面から見ても国産材を使うメリットは大きいんです。外材は遠い国から運んでくるために多くのエネルギーを使いますが、地元の木なら少ないエネルギーで済みますね。今日、コンクリートやプラスチックなどが木の代替材として使われますが、これらは作る工程にも燃やす際にもCO2を排出します。木材は育つ時にCO2を材に蓄積するので、燃やしたり腐ったりしなければマイナス。燃やしてもプラスマイナスゼロです。昔のように間伐材を有効利用することも見直すべきですね。

林業は変われる

今後、私たちの生活で鍵となるのは健康と環境だと思います。木材は熱を遮る効果が高いので夏は涼しく、冬でも暖かい。木は香りや手触りがよく、ココロが落ち着くという効用もあります。また、殺菌効果なども認められており、近年アレルギーなどが問題になっていますが、絨毯と青森ヒバの床でダニの数を測定したところ、ヒバの床はダニがごく少なかったというデータもあります。たとえ外材より2割高くても、それが山にかえり、自分たちの生活に戻ってくるという利点を消費者に気づいてもらうこと、健康と環境へのプラスイメージをブランド化しながら国産材を使っていくこと。このように消費メカニズムを変えて、国民生活の中に木材を使うことを組み入れていくことが需要拡大の糸口になると思います。

宮林茂幸さん

宮林茂幸さん プロフィール

宮林 茂幸(みやばやし しげゆき)
東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科森林政策学研究室教授(農学博士)日本森林学会会員、林業経済学会評議員、日本緑化センター理事、美しい森林づくり全国推進会議事務局長などを務める。
1953年(昭和28年)長野県生まれ。
宮林茂幸さん インタビューINDEX
第1回「森の国」日本の森が危ない
第2回“緑の砂漠”を生き返らせたい
第3回 森林がもたらす人・環境への影響
最終回 これからの森林保全への提言