一級建築士 原田 勉さん

インタビュー

国産材の魅力と
利用への課題(全2回)

一級建築士 原田 勉さん

日本は森林に恵まれた国ですが、建築等で使用される国産材はわずか。森の恵みを生かした国産材を利用することの問題点とはどんなことなのでしょう?
「東京の木・いえづくり協議会(※1)」のメンバーであり、国産材を使った設計をされている一級建築士の原田勉さんを訪問。国産材を利用する際の苦労や、国産材を利用するために消費者・生産者はどのように取り組めばいいかなどについて、お話をうかがいました。

※1 東京の木・いえづくり協議会: 製材所、工務店、設計事務所及び西多摩地域の市町村をメンバーに東京都が事務局となり、2001年に設立された任意団体。東京都と会員が連携し、東京の木(=多摩産材)を使用した住まい作りを通じて、安全で安心できる居住環境の実現と、持続的な森林資源の構築、循環型社会への寄与に努めている。

  • 第1回
  • 第2回

森や木に親しんで木材を知ることの大切さ

日本の風土に合ったスギ

―国産材にこだわるようになったきっかけは?

若いころ海外旅行をして、たくさんの国を訪れて、日本のように緑豊かな場所は少ないことに気付きました。こんなに森林に恵まれた国なのに、どうして家作りに国産の木を使わないのだろうと。実際に国産材を利用してみると、高温多湿の日本の気候に予想以上に合っていました。ジメジメした梅雨の時期でも、木の家の室内はカラッとしています。触ったときのぬくもりや木の香りなど、五感で感じる優しさも我々日本人の感覚にフィットしていました。
また健康面での安全性という点でも、国産材なら安心です。建築士としては「快適な家を作ってもらってありがとう」と言われるのが、何より嬉しいことです。どこの国でも、その土地の材料を使って住まいを作ってきました。それが、自分たちの風土や文化を守っていくことになるのではないかと思います。

―国産材ではどのような木が使われていますか?

東京にはスギが多くあるので、スギを使っています。柱も梁もそうです。お風呂や土台関係はヒノキを使います。床材は家具を置くために、傷つくことが多いので、堅めのヒノキやマツ材を使います。床でも和室の場合は傷つくことが少ないのでスギを使います。スギは中に空気を多く含みますので、スギ材の床を裸足で歩いても柔らかく、暖かいんです。しかし、スギの床材は傷つきやすいということで、最近ではあまり使われることがなく、一般にマツやヒノキが使われていますね。

―スギはどうしてよく使われてきたのですか。

スギは在来種であり、日本の気候・風土によく合っています。建築的にも使いやすいのです。それは広葉樹に比べるとねじれが少なく、加工がしやすいからです。

―木材はどのような部分を使うのですか?

丸太中央の芯は強いので、柱や梁などの構造材として使います。丸太外周部では柾目(まさめ ※2)が取れます。柾目は狂いが少ないので枠材などに使われます。また、外周部では鴨居(かもい ※3)や長押(なげし ※4)などの材も取れます。上手に木取りをして全体の5割程度を使います。

※2 柾目(まさめ):木材の表面に現われた模様が平行な木目のこと。
※3 鴨居(かもい):和室の襖や障子などの建具を立て込むために引き戸状開口部の上枠として取り付けられる横木。
※4 長押(なげし):鴨居の上に取り付ける部材で、柱を水平方向につなぐ。

国産材は乾燥が大事

―国産材の使用ではどのような苦労をされていますか?

乾燥です。乾燥に時間をかけるとよい材木ができあがります。自然乾燥をする場合には、山で切り倒し、葉を付けた木のまま2〜3カ月ほど置いて葉っぱから水分を取ります。これは「葉枯らし乾燥」といって自然にゆっくり水分が抜けることで、色やつやがよい材になります。その後切り出した丸太の状態で製材所に置いておき、さらに乾燥させます。トータルで半年から1年をかけます。こうしたゆっくりとした流れで木を乾燥させると良質な木材となります。

―現状ではそんな時間は取りにくいのでは?

そうですね。今は乾燥に長い時間をかけられないケースが多く、人工乾燥をしていることがほとんどです。木材におかまいなく乾燥機に入れて人工乾燥を行っています。しかし、人工乾燥で急激に乾燥させると、木の細胞が破壊されてしまい、色つやもよくないし、構造的に材質もよくないものになります。現代では、契約して、すぐに着工したいケースが多い。そのため、人工乾燥をしている場合が多いんです。本来ならば、設計段階で大まかなプランが決まった段階で材料を先行発注すれば、約半年近くの時間が得られるんです。あらかじめ半年前に仮発注しないと自然乾燥されたいい材料が手に入らないのです。

地元の木、東京の木

―東京の木の特徴は?

青梅などの地域は、もともと足場丸太の産地でした。東京都内でも枝打ちが行き届いた木に育っている森がたくさんあります。しかし、国産材は販売価格が安すぎてコストが合わず、林業家が出したくないのが現状です。

―地域としても違いがありますか?

国産材でも地域によって全然違うんです。林業先進地域として和歌山や秋田は山の管理が進んでいて、いい材料です。私は地産地消が大切と考えて、地元で合う東京の木をメインに使っています。

―東京の木で家を作るには?

東京の木で家を作ろうとすると、販路が少なくて確かに時間がかかります。一般の人が東京の木を買おうとしても買える場所がないのです。現状では、東京の木を利用している建築士や工務店に依頼するのが早いでしょう。木を使いたいと考えている人が、現地に出かけて山を眺めたり、木材に触れたりできる産地直売所を設けるなど、もっと自分たちが住んでいる地域の森や木に親しんでもらう工夫が必要だと思います。

原田 勉(はらだ つとむ)

原田 勉さん プロフィール

原田 勉(はらだ つとむ)
カラビナ一級建築士事務所代表。一級建築士。住宅性能評価員。
国産材を使った一般住宅をはじめ、集合住宅、医療・福祉施設などを多く設計する。
原田 勉さん インタビューINDEX
第1回 森や木に親しんで木材を知ることの大切さ
第2回 国産材をもっと利用していくために

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